著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
読書日:2025年4月9日
はじめに
「自分の成功は努力と実力の結果だ」――そう思い込んでしまう私たち。しかしその裏には、気づかぬ「運(まぐれ)」の影響が潜んでいます。本書『まぐれ』は、偶然の力を過小評価しがちな人間の思考のクセを、行動経済学や統計、哲学、心理学の視点から暴き出します。
1. 人間の性質と「運」の錯覚
人は「不確実性」に弱く、偶然を理解する力に限界があります。
- 知識を信じすぎる罠
私たちは専門家の話を信じたがり、「正しさ」の証拠ばかりを探します。しかし、偶然による成功や失敗を「実力」と思い込んでしまうことが多いのです。 - 正のフィードバックと自信過剰
過去の成功がさらなる自信を呼び、リスクを軽視するようになります。これは金融市場でも顕著で、バブルの温床となります。 - 直観と脳の特性
私たちの脳は直観で判断しがちで、後から理由を「でっちあげて」納得しようとします。つまり、「結果の理由づけ」は往々にしてフィクションなのです。
2. 偶然の力とその見えにくさ
タレブは、「まぐれ」と「実力」の見分けがいかに難しいかをさまざまな観点から示します。
- 確率思考の重要性
確率や統計の知識がなければ、出来事を誤解してしまいます。たとえば、「10年間負けなしのファンドマネージャー」も、たまたま運が良かっただけかもしれません。 - 生存者バイアス
成功者だけを見てその理由を語るのは間違い。失敗して姿を消した人々の存在を忘れてはいけません。 - 因果関係の誤認
「○○をしたから成功した」と思い込みますが、それが本当に因果関係かは疑わしいことも多々あります。
3. 科学的思考と投資への応用
- 科学的な態度が大切
誤りを認め、仮説を立てて検証し、反証にオープンであるべきです。 - 投資の本質を見極める
投資の世界では「ノイズ(偶然の変動)」と「シグナル(本質的な傾向)」を区別する力が求められます。だが、これは人間の認知ではとても難しい。 - リスクの受容と制御
偶然を完全に排除することはできません。だからこそ、リスクを制御し、破滅的な損失を避ける構えが重要になります。
投資や意思決定に対して科学的なアプローチを取り入れたい方には、この本が非常に参考になります。
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4. 結論:「謙虚さ」と「運との付き合い方」
- 「長期的にはリターンが収束する」という幻想
市場にはノイズが多すぎて、短期も長期も「運」の影響は常に存在します。過去の実績を過信すべきではありません。 - 「弱さを知ること」が強さになる
自分の認知の限界や思い込みを受け入れることで、より柔軟で堅実な意思決定ができるようになります。
おわりに
『まぐれ』は、投資やビジネスにおける「成功の正体」を問い直す一冊です。
運と実力の境界を見誤らないこと。自信過剰に陥らず、自分の弱さを知り、確率の世界に生きていることを忘れないこと。
投資家でなくとも、日常の意思決定すべてに通じる深い洞察を得られるでしょう。
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【まとめ】マインドマップ


まとめその1。bot開発の合間に少しずつ書いている。 https://t.co/4rKHwgNMTK pic.twitter.com/6VJlxBMOzb
— よだか(夜鷹/yodaka) (@yodakablog) April 9, 2025