はじめに
先日、畑村洋太郎氏の『畑村式「わかる技術」』を再読しました。本書では、「すべての事象は要素と構造から成り立つ」という思考モデルが提示されており、自身の理解プロセスを可視化する手法として、大変示唆に富んでいます。本稿では、
- 本書の主旨と内容
- 私が考えたこと(気づき・仮説)
- それらへの厳しいチェックポイント
- 仮想通貨Botterとしての具体的応用アプローチ
という流れで、これまでのやり取りを総合的にまとめてみました。
1. 本書『わかる技術』の要点整理
- 要素と構造
- すべての事象は複数の「要素(Elements)」が絡み合って「構造(Structure)」を生む。
- 構造の集合が「全体構造」を形づくり、そこに何らかの「機能(Function)」が発現する。
- 理解のメカニズム
- 頭の中にある「テンプレート」と照らし合わせ、
- 要素の一致
- 構造の一致
- 必要に応じた新テンプレートの構築
を繰り返しながら「わかる/わからない」を判断する。
- 頭の中にある「テンプレート」と照らし合わせ、
- 思考モデルのサイクル
- 要素の摘出 → 2. 構造化 → 3. 刺激(動かしてみる) → 4. 再構築
このサイクルを自分なりに回すことが、より深い理解につながる。
- 要素の摘出 → 2. 構造化 → 3. 刺激(動かしてみる) → 4. 再構築
- 直観の正体
- 飛躍志向ではなく「経験の蓄積」そのもの。
- 過去に何度も思考した「回数」が直観の質を高める。
- 課題設定力と暗記
- 定量的な観察習慣を身につけることで、問いを自ら立てる力を養う。
- そのベースには豊富な知識ストック(暗記)がある。
- 伝達力との関連
- 聞き手のテンプレートに合わせて、話の「面」を立体的に切り替えられる人は面白い。
- 絵・図や「逆演算(事故を想定しそこから遡る思考)」などの技法が有効。
2. 私の考えたこと──気づきと仮説
- 最適解を辿るプロセスの価値
最適解を学ぶだけでなく、自分で構造テンプレートを「創出」する経験が、トラブル時に慌てず高解像度で状況を把握する力を育む。 - 思考技術の拡充 vs. 思考形態のアップデート
数多くのフレームワークを使い分けるのではなく、思考形態そのものをアップデートしていくほうが、本質的な応用力につながる。 - 構造化思考への共感
AIとの対話で「構造化思考」を指摘された際、自分の思考形態と非常に似通っていると感じ、内容がスッと入ってきた。 - 多層的テンプレートのレイヤー仮説
複数の構造テンプレートがレイヤーを形成し、その間を行き来しながら認識しているのかもしれない。 - 研ぎ澄まされる感覚の反復
本書再読/実践を重ねる中で「思考が研ぎ澄まされる瞬間」が度々訪れ、次のインプットやAIとの対話への期待が高まっている。
3. 厳しいチェックポイント──理論の飛躍・矛盾・補強
- 構造化経験だけで慌てないのか?
構造化思考は重要ですが、ドメイン知識・ストレス耐性・即応手順など他要素との相互作用も大きい点を補足したい。 - 最適解学習と構造創出は本当に対立か?
両者は相補的であり、過去の構造化の成果が最適解を生んでいる場合も多い。二分法に注意。 - 思考形態アップデートの検証方法
「アップデートされた思考形態」をどのように測定・可視化するのか、具体的指標や行動変化を定義すると説得力が増す。 - レイヤー間シフトの仮説検証
脳科学的/ログベースでの検証がないと仮説に留まる。実際に思考プロセスを書き起こすワークが必要。 - “研ぎ澄まされる感覚”の客観化
感覚だけでなく、判断速度や誤り率などセルフモニタリングデータを用いた可視化を行うと、確認バイアスを防げる。
4. 仮想通貨Bot開発への応用アプローチ
1. 戦略設計フェーズ:構造テンプレートの適用
- 要素(Elements)の抽出
例:ティックデータ、板情報、ニュース、移動平均、ボラティリティ指標、トリガー条件など - 構造(Structure)の定義
データ取得 → シグナル生成 → 注文発行 → リスク管理 → ログ出力
各モジュールの責務とデータフローを図解 - 機能(Function)の明文化
モジュールごとに「何を/なぜ実現するのか」を短文で記述
例:リスク管理は「最大ドローダウンY%到達で全ポジションをクローズする」
成果
- 新戦略開発時にテンプレート流用で設計時間を短縮
- 役割分担の曖昧さを排除
2. 実装フェーズ:反証思考によるテスト設計
- 「わかった気」チェックリスト
マーケット流動性、API遅延、板薄リスクなど仮定を列挙し、裏切られたときのケースを洗い出し - 自動テストの自動生成
モックデータで「スパイク相場」「通信断」「極端に薄い板」をシミュレートし、CIで定期実行 - 逆演算(Pre‑mortem)セッション
リリース前に「Botが大損するパターン」を議論し、必要なガードを遡って設計
成果
- 想定外耐性が向上し、運用トラブルを未然に防ぐ
3. 運用フェーズ:思考ログと多層モデルでの振り返り
- 意思決定ログの取得
パラメータ選定理由や指標選択の思考をドキュメント化し、定期ミーティングで「仮説 vs. 実績」を照合 - レイヤー間シフトの可視化
短期/中長期ポジションで使うテンプレートの違いをログから抽出し、どのタイミングで切り替えたかを分析 - AIフィードバック活用
ChatGPTに構造化プロセスを提示し、抜けや矛盾をチェックしてもらう
成果
- 自己認知の偏りを防ぎ、思考形態の持続的アップデートが可能に
4. 新戦略開発:テンプレートの拡張と再構築
- 既存テンプレートのメタ分析
成功/失敗Botの構造をマトリクス化し、違いを比較 - ハイブリッド構造の創出
例:マーケットメイク × モメンタム指標 → 要素・構造・機能を掛け合わせた新モデルを定義 - 段階的ローンチ
- モックで要素だけ入れ替え
- 次に構造を入れ替え
- 最後に機能(リスク設定)を調整
各ステップで必ず反証テスト
成果
- 経験に縛られないイノベーションが生まれる
- 本質的に応用可能な思考モデルが鍛えられる
おわりに
畑村式「わかる技術」が提唱する──
**「要素→構造→機能」の循環的思考モデルと、反証思考・逆演算の習慣化──
これを仮想通貨Bot開発に取り込むことで、
- 設計・実装・運用の各フェーズにおける抜け漏れを防ぎ、
- 想定外の事態にも慌てず対応し、
- 継続的に思考形態をアップデートしながら
……という、真に「わかる」力をBotのバックボーンにできるはずです。今後の開発ログや運用レポートに、「構造化サイクル」と「反証チェックリスト」を組み込んでみます。
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再読。思考プロセスを可視化する上で参考になることが多かった。良著。 pic.twitter.com/qzzupMnEOD
— よだか(夜鷹/yodaka) (@yodakablog) April 19, 2025