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レーエンデ国物語 喝采か沈黙か レビュー - 心を揺さぶる物語の力

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魅惑的な物語に引き込まれる

今回ご紹介するのは、「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か」。これは人気シリーズ「レーエンデ国物語」の第3巻であり、前作「月と太陽」のドラマチックな結末を土台に展開される、思索深い物語です。前作のストーリーを明確に土台にしていて、2作目を読み込んでいると非常に楽しめる内容になっています。今作も非常に読み応えがありました。

見どころ

主人公の葛藤と成長

物語の主人公、アーロウは劇団ルミニエル座の座長であり、戯曲の才能を持つ兄リーアンと共に劇を創り上げています。この兄弟は、互いに複雑な感情を抱えつつも、お互いに影響を与え合いながら、それぞれの道を歩んでいます。アーロウの内面の葛藤と、リーアンの孤独と才能とが織りなす関係性が、読者の心に深く響くことでしょう。

歴史を紐解く壮大なテーマ

アーロウとリーアンは、「失われたレーエンデの英雄」の物語を戯曲にすることで、過去の真実に光を当てようとします。この過程で、読者はレーエンデ国の歴史と文化に深く没入することになります。彼らの戯曲は単なる物語ではなく、禁忌とされた歴史を解き明かす鍵となります。

感動的な人間ドラマ

この物語は、ただのファンタジー小説ではありません。兄弟のわだかまりが解けていく過程は、心温まる人間ドラマを展開し、読者に深い感動を与えます。アーロウとリーアンの過去を乗り越え、新たな絆を築いていく様子は、多くの読者にとって共感と勇気の源となるでしょう。

総評:一読の価値あり

「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か」は、その緻密な人物描写と巧妙なストーリーテリングで、読者を物語の世界へと深く引き込みます。前作を読んだ方はもちろん、新たにシリーズに触れる方にも、この壮大な物語の魅力を強くおすすめします。

どうぞ、この感動的な旅に出かけてみてください。この本があなたの心に新たな光を灯すことを願っています。

あらすじ

主人公は、劇団・ルミニエル座の座長兼俳優のアーロウ。男性であり物語中での年齢は23〜24歳と推測されます。アーロウには戯曲の劇作家としての天賦の才能を持つ双子の兄・リーアンがいます。

アーロウの所属している劇団は、娼館としての仕事も請け負っていて、劇を見せる一方で、その劇が出演者達を娼婦(夫)として売り出す役割も果たしています。リーアンも例外ではなく、娼夫としての仕事も請け負ってお金を稼いでいます。

アーロウとリーアンは、双子の兄弟であり同じ街に暮らしていますが、アーロウは劇団(娼館)で、リーアンは街の一角に部屋を借りてそれぞれ別々に暮らしています。二人は決して仲が悪いわけではないのですが、アーロウはリーアンの才能に嫉妬のような感情を抱くと同時に、過去にあった出来事からリーアンに対して素直に接することができず、また、リーアンも天才ゆえの傍若無人っぷりからぶっきらぼうな態度を取ったり粗暴な言動をしたりすることが多く、二人は積極的な交流を行なっていない状態です。

そんな状態で日々を送る二人でしたが、ある日兄・リーアンに高名な演出家から戯曲の執筆依頼が届きます。そこでリーアンが題材として選んだのは「失われたレーエンデの英雄(テッサ・ダール)」の物語でした。

とはいえ、テッサの話題は帝国支配下のレーエンデにて禁忌の話題とされており、その出自はおろか性別さえも全く伝わっていない現状。アーロウは、戯曲家として歴史に名を残したいリーアンと共に、「失われたレーエンデの英雄」の情報を求めて旅立つことになる、というストーリーです。

受け継がれる物語

本書の魅力はなんと言っても、2巻(レーエンデ国物語 月と太陽)の壮絶なストーリーを土台にしてそれを追っていく流れにあります。

前作の主人公・テッサは、レーエンデ解放のためにあらゆることを犠牲にしながら戦い続けるも、最後は帝国法王のはかりごとがテッサの活躍を上回り、捕えられたのちに処刑されてしまいます。しかも、その名を後世に語り継がれることのないように歴史に名を残すことすらも許されないように図られてしまいました。

本作の舞台は、そこから100年以上が経過した時代。帝国の政策はレーエンデにも行き渡っていて、テッサの名前はほんの僅かな人々の間にだけ語り継がれているだけ。しかも、その名を口にしたことが帝国関係者の耳に入れば、即座に捕えられて厳罰に処せられるという徹底ぶり。

そんな時代に生まれた双子のアーロウとリーアンが帝国の支配下で「失われた英雄」の物語を戯曲におこして、しかも劇場で上演しようとするのですから、読んでいるこちらはハラハラさせられっぱなしです。

本作は前作のような戦争の時代ではないため、戦闘描写は皆無に等しいですが、本作のような知略を巡らせつつ過去に起こった真実の歴史に迫っていく展開も、緊張感があってとても読み応えがありました。

解けていくわだかまり

リーアンは、ルミニエル座の脚本を書くことで生計を建てており、常に優れた脚本を仕上げてくるため、アーロウはリーアンに対してどこか嫉妬のような感情を抱いています。

また、過去に兄・リーアンが脚本家として独立する際に娼館の主人と契約を交わしてそれまでの住まいであった娼館を出ていくシーンが描かれるのですが、リーアンについて行こうと申し出た弟・アーロウに対して、兄・リーアンは「お前はここに残れ」という主旨の台詞を言い放ちます。その出来事を「才能のない自分は兄に置いて行かれた」と捉えてしまったリーアンは、アーロウの才能を認めつつも、「自分には価値がない」、「アーロウに才能があることを素直に喜べない」という複雑な気持ちを抱えて生きていくことになりました。

しかし、物語が進んでいくうちに、実際には兄・リーアンの言動は弟・アーロウの性格などを分かった上でのものだったことが明らかになっていきます。アーロウがそれまでリーアンのことを誤解していたことを謝る場面では、アーロウの心のわだかまりがほぐれていくことが伝わってきてじんわりをあたたかい気持ちになりました。

また、アーロウだけでなく、リーアンもアーロウに対して複雑な感情を抱いています。リーアンは劇作家としては超一流の才能を持っていますが、天才ゆえの孤独も抱えていて、人並みの幸せでは満たされない状態で過ごしています。そのため、弟・アーロウがいつも人のために行動して周りの人達から愛されているのを羨ましく思ってもいました。

そんなリーアンが、過去に娼館を出ていった経緯やそれまで抱いていた思いをアーロウに伝えるシーンもまた、本作において印象深いシーンです。

すれ違っていた二人が過去のわだかまりを解消して、再び絆を深めていく展開は本作の大きな見どころの一つです。

何のための生きるのか?

リーアンの劇作家としての才能は、実は本当に神から与えられたものであり、リーアンの記憶の中には、生まれてくる前に朧げながら神と交わした「お前に類まれな才能を与えてやるが、その才能で歴史に名を残す代償として英雄の生きた人生と等しい長さがお前の寿命となる」というやりとりがあるのでした。

普段は傍若無人に振る舞い、劇作家として歴史に名を残すためには命すら惜しくないと言い放つリーアン。しかし、テッサの死んだ歳が25歳であり、自分の寿命が残り1年であると知ったリーアンは激しく狼狽えます。

しかし、アーロウは「歴史に名を残さなければ命を失うことはない」と考え、戯曲をリーアンに書かせながらもその作者は自分(アーロウ)であると発表し、死の運命からリーアンを救おうとします。

様々な人物の思いが交錯する中、自分の命惜しさに戯曲を書くことを放棄しようとするリーアンでしたが、ある人物の計略に嵌められて、結局は戯曲を書くことを決意します。結果的に計略に嵌められるという形ではあるものの、戯曲を書くことを決意した信念は曇りのないリーアン自身の真実の決意でした。

その決意のシーンで、リーアンがアーロウに「魂を震わせる感動を知っていたなら、人は過ちを犯さなかったかもしれない。自分は戯曲で人を感動させて、争いのない世界を作る」と伝えるシーンでは、2巻で散っていったテッサやその周りの人々の生き方が確かに受け継がれているということを感じさせてくれました。

限られた時間の中で何のために生きるのか?

アーロウもリーアンもそれぞれに自分の答えを見出しながら、お互いの生き方も尊重し合う関係性が描かれているのは、双子という設定を存分に生かしているからこそだな、と感じました。

真実の歴史を語る戯曲は完成するのか?そして、二人の運命はどうなっていくのか?

物語の結末はぜひ、あなたの目で確かめてみてください。

総評

本作は大人向けのファンタジー小説として、近年稀に見る面白さを誇る作品です。

人物描写が丁寧で、ストーリー構成も緻密。また、前作からのストーリーもしっかりと引き継いでいて、シリーズものとしても隙のない構成になっていると感じます。

エンディンまで一気にかけるけるようにして読んだ本作。最後のシーンまで緊張感のある展開が続き、物語のラストも感動を残す締めくくりでした。

おすすめの本ですので、ぜひ一度読んでみてください。

レーエンデ国物語 喝采か沈黙か

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