こんにちは、よだかです。
今回紹介するのは、坪井大輔さんの「WHY BLOCK CHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?」です。
ビットコインや暗号通貨で一躍有名になったブロックチェーン。
ところが、多くの人は表面的な話題を知るにとどまり、本質の理解には至っていません。
ビットコインとブロックチェーンが同じものであるという理解に留まっている人もいるでしょう。
あなたは、ブロックチェーンとは何なのか説明できますか?
本書は、ブロックチェーンの基礎的な知識とブロックチェーンがもたらす未来を伝えてくれます。
最後まで読めば、これからの学びの土台となること間違いなしのおすすめの1冊です!
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンは、4つの技術を組み合わせです。
①暗号化技術
1回1回の取引の記録を暗号化します。
これ自体は、普段使われている技術です。
例えば、Eメール。入力した文字列が一旦暗号化されて送信されることイメージしてください。
ブロックチェーン上でも「1回の取引ごとに」記録が暗号化されていくのです。
ブロックチェーンが独自性は、その管理の手法にあります。
ブロック管理
個々のデータを一まとめにして管理するという発想。
取引データが一定数溜まったら1個のブロックに固めて、封をするというイメージ。
例えば、ビットコインだと1ブロックに4200件の取引データが入ります。
ブロックに封をし、確定させるまでに約10分かかります。
データを溜めて、確定させ、封をするの繰り返し。
こうして出来上がったブロックに番号をつけて、順番に次のブロックへと繋いでいくのです。
ここでもうひとつ重要なことは、「ブロックの中身を入れ替えると、前後のブロックとの番号のつながりがなくなってしまう」という特徴があること。順番につながってく状態を保つためには、段ボールの中身を触ってはいけません。
②コンセンサスアルゴリズム
コンセンサスとは、合意形成のこと。
ブロックチェーン上では、全員が管理者になり、ブロックの中身が正しいかどうかを確認するのです。
ブロックチェーンの信頼性を形成するために、全員が中身を確認する過程が合意形成です。
合意形成の手段は、本当に様々です。
この作業や計算に膨大な手間がかかります。
この点は、ブロックチェーンの今後の解決課題でもあります。
1件のデータ処理に関してセキュリティ対策をとる。
その1件1件をまとめたブロックに対してもセキュリティ対策をとる。
そして、そのブロックにまとめることについても合意形成をとる。
このようにセキュリティ対策が何層にも渡って形成されているのがブロックチェーンの特徴です。
③ピア・トゥ・ピア(P2P)
個々の参加者同士が通信する技術。
ある取引データが発生した場合、P2Pで繋がった全ての参加者に同じ情報が流れます。
この状態が維持されていると、どこか一箇所のサーバーが故障したとしても、他のサーバーに同じ情報が保管されていることになります。
全員が同じ情報を持ちあってるので、データがなくなることがないわけです。
P2Pで技術で分散型ネットワークを形成すると、どこかで不具合が起きたとしても、全体が止まるようなことはありません。
④DLT(分散型台帳技術)
Distributed Ledger Technologyの略。
P2Pでつくる分散型ネットワークの中の1カ所1ヶ所に台帳(取引の記録帳簿)を持っている状態です。
例えるなら、Aさんの預金通帳もBさんの預金通帳もみんなで持ち合っている状態です。
そのため、どこか1ヶ所でデータの改竄が行われても、すぐにバレてしまうのです。
DLTは、データの改竄の防止において強さを発揮してくれます。
しかし、問題点もあります。
それは、DLT上ではその情報を誰でも見ることができてしまうということです。
そのため、ブロックチェーンに入れる情報は「プライバシーに直結しないもの」に限定すると良いでしょう。
ここまでをまとめると、以下のようになります。
ブロックチェーンとは
①その情報が、一目見ただけでは分からない状態になっている
②それに関わる全員が、中身やセキュリティを確認している
③全員が繋がって、情報を持っている
④同じ情報を持っていて、それぞれがその中身を確認することができる
本来は、人と人とが直接やりとりをする中で作り出される”信頼”がデータベース上に溜まっていくのです。
思想としてのブロックチェーン
ブロックチェーンの本質は、技術にあらず。
大切なのは、その思想。
ブロックチェーンがもたらすのは、管理者のいない社会です。
その社会を実現するのに役立つのがブロックチェーンという技術です。
ところが、1企業の1ビジネスにおいてブロックチェーンを入れてもほぼメリットが出ません。
ブロックチェーンは、その性質上、元来あった中央集権型のモデルを破壊し、自律分散型のシステムを構築するのに役立ちます。
ですから、異なる企業間で協力体制を作る時にこそ、その真価を発揮します。
「各社の独立性を保ったままで、複数の会社を束ねたいとき」などに有効なシステムです。
「管理者を排除して、各々が独立した組織として動く」というのがブロックチェーンの本質を理解する上で重要な部分です。
ブロックチェーンが認知されるにつれて「パブリック」と「プライベート」という違いも生まれてきました。
管理者の不在が、現行の社会に適しているのかどうかということを考える上でとても重要な部分です。
パブリックブロックチェーン
誰でも参加できる形態のブロックチェーン。
ビットコインなどに代表されるように、誰でも参加可能なオープンネットワークです。
管理者がいないということは、トラブルがあった際に責任を取る人もいないということです。
また、害意を持った参加者を拒むこともできません。
今の会社や組織ではシステムの責任を取る管理者が必要なはずですので、ブロックチェーンを取り入れた管理体制が馴染まないのです。
プライベートブロックチェーン
そこでできたのが、プライベートブロックチェーンです。
このネットワークに参加するためには誰かに承認してもらう必要があります。
つまり、管理者の存在するブロックチェーンです。
先にまとめたブロックチェーンの4つの技術のうち、一部を緩めるという考え方です。
害意を持った参加者を弾くことができます。
プライベートでは、ブロック化をしない例もあり、合意形成の重要性が高まります。
完全に人が介在しないシステムは、客観性は高まりますが、人間は機械のように単純ではありません。
仮想通貨やブロックチェーンがこの世の全ての問題を解決するというのは、幻想です。
ブロックチェーンの限界
ブロックチェーンに向かないこともまとめておきましょう。
①1件あたりのデータが大きい場合
大きなデータの管理は、ブロックチェーンに向いていません。
取引の処理や記録に手間をかけているわけですから、大きなデータをブロックチェーンで扱おうとすると、どうしても遅延が発生します。
巨大なデータ容量をもつ画像データなどは、ブロックチェーン上で扱うべきではありません。
その解決法としては、既存技術との組み合わせが重要になります。
ブロックチェーンが「管理台帳」としての技術であることを活かして「取引の情報のみ」を扱うのです。
コンテンツの目録と利用履歴の管理に特化させて運用しましょう。
そして、コンテンツ自体は、従来技術によるデータベースに収めておくのです。
重要なのは、ブロックチェーンで扱うものを「単純な画像データ」と「データベース上のID」のみにしておくことです。
情報が価値を持つのは、複数の情報が組み合わさるからです。
プライベートな情報を扱うコンテンツにしないことを心がけましょう。
情報としての価値が生まれにくいようにデータ化にするという視点が大切です。
要となるデータのみをブロックチェーンで管理し、それ以外は従来型の管理方法をするということです。
②特定のデータのみを検索してすぐ取り出したい場合
「過去の特定のデータのみを取り出すこと」もブロックチェーンに向かない用途の一つです。
ブロックチェーンとは、過去から今に至るまでの”変化”を記録した台帳です。
ブロックチェーンに向いているのは、過去の変化の履歴を追うことであり、特定の情報を抽出することではありません。
なぜなら、「特定の情報を特定のタイミングで記録する」ということをおこなっていないからです。
そして、ブロックチェーン上のデータは全て暗号化されていて、人間に理解できるものは一つもありません。
私たち人間には理解できないアドレスに変換されてしまっているため、そもそも特定の情報にアクセスするための手がかりすらないのです。
つまり、キーワード検索やテキスト検索のようなことは、そのままでは不可能なのです。
最近では、この課題に対応するような技術が開発されてきてはいますが、基本的には特定の何かを抽出するといったことは苦手であると認識しておきましょう。
③管理対象が、固体管理に向かない場合
固体管理しにくいものもブロックチェーンでの管理に向きません。
通常ひとまとまりに管理されているものがこれに当たります。
例えば、袋詰めにされた野菜。
品質管理の面から、袋ごとにシリアルナンバーが割り振られて、生産者や流通経路が追跡できるようになっています。
ピーマンの一つ一つにシリアルナンバーが割り振られているわけではありません。
通常は、スーパーに並んだ袋詰めの状態で、袋ごとに管理されています。
例えピーマンの一つ一つにシリアルナンバーを割り振ったとしても、そこから品質管理のコストに見合うだけの利益が得られるでしょうか?
こういった固体管理の必要性のないものは、そもそもブロックチェーンを導入しなくても良いのです。
暗号通貨は通貨になるか
著者は、暗号通貨が円に代わるものになるかどうかという問いに対して、否定的な見解を示しています。
なぜなら、暗号通貨の大部分を持っている人たちはごくわずかな数のお金持ち達だからです。
そんな一部の人々が一斉に暗号通貨を売却してしまったら、あっという間に価値が暴落します。
一般人が通貨として運用していくにはリスクが高いと述べています。
ただし、今後数年間は多くの人々がその技術や可能性に注目し続けるため、投機・投資という金融商品の一つにはなり得るとも述べています。
暗号通貨は「価格変動も激しく、危険を伴った商品」という側面があるのは間違い無いでしょう。
そもそも通貨が通貨として機能するためには、”多くの人がそれを通貨として信頼していること”が条件です。
世の中に広く行き渡っているほど、その信頼性が担保されます。
暗号通貨が担保する信頼というのは、あくまでデジタル上での信頼です。
その信頼が現実世界の信頼を同格であるかのように錯覚するのは危険です。
暗号通貨ばかりに目が行きがちですが、そこにばかり注目してしまうと、ブロックチェーンの本質を見失ってしまいます。
また、ブロックチェーンが超えられないものの一つに「法律の壁」があります。
どんなに便利な技術であっても、そのコミュニティのルールを破って運用することはできません。
ルールの中での運用を心がけなければ、法に則って罰を受けることになります。
ブロックチェーンは、あくまで「技術の一つ」です。
ビットコインなどのようにお金を生み出すものであるという認識は危険です。
よだか流・深掘り
テクノロジーのもたらす変化は、人々を強く引きつけます。
そこに自分自身の輝かしい未来を感じるからです。
”信仰”と言い換えてもいいかもしれません。
今後、ブロックチェーンに価値を感じる人々はますます増えていくでしょう。
そして、ある一定の地点を超えたところで、思考停止でテクノロジーの恩恵を受け取る人たちが一気に膨れ上がる時期が来ます。
その時に、自分自身はブロックチェーンの”仕組み”や”本質”を人に語れる人でありたいです。
ただ目の前にあるものを無自覚に受け取るのではなく、そのものの本質を理解して感じ取る。
様々なテクノロジーが発展していく中で、その根底にポジションを取るであろうブロックチェーン。
個人の時代の到来を後押しするであろう革新的なテクノロジーであることは間違いありません。
大きな時代の流れに抑圧された人々が生み出した思想が、ブロックチェーンなのだと感じます。
中央集権の抑圧に屈することに不満を覚えた人たちの意思が集まって、大きな力を発揮しようとしている現代。
人々の不満(潜在的なものも含めて)に焦点を当てて、今後到来するであろうトレンドを予測するヒントになります。
満たされないと感じている人々の潜在的なニーズ。
突破したい現実とそれに伴う諦めと外部への期待。
ブロックチェーンは、そんな期待に応える光なのです。
GAFAに代表される超巨大企業への対抗戦略としての側面を持つブロックチェーン。
勉強をすればするほど、自分自身という資本をネット上に気づくことができるというのは本当に革新的です。
搾取されない構造の中に自分を置くことができるというのは、最強の安全基地です。
現実の空間とサイバー上の空間。
どちらにも安心できる場が増えていくことで、ネット社会での安全性がより高まっていくことが予測されます。
まだまだ黎明期で課題は多いけれども、ブロックチェーンという思想が広まって、多くの人がその良さを認識するようになれば、より良い社会の実現が見えてきます。
まとめ
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
ブロックチェーンを正しく学ぶきっかけになる本書。
黎明期から携わってきた方の知見を存分に浴びることができます。
世の中を変えていく新たな技術の真髄に迫りたい方は、ぜひ手に取って読んでみて下さい。