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【読書・感想】成長欲求は悪なのか?【資本主義を終わらせるステップ】 

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人新生の「資本論」(著・斎藤幸平)を読了。

ベストセラーとなるだけあって、学びのある一冊だった。

どんな本?

資本主義社会の問題点を指摘し、その解決策を具体的に提案する本。
マルクスの「資本論」の解釈をヒントに展開。

こんな人におすすめ

  • 資本主義とは何か知りたい
  • マルクスの「資本論」の解釈を深めたい
  • 環境問題に関心がある
  • 今、我々ができる具体的なことを知りたい

得られるもの

  • 資本主義システムそのものに挑むマインド
  • 環境問題の知識
  • 世界の環境問題の現状
  • 資本主義の弊害とその解決策
  • 資本主義が生み出したもの

資本主義の限界

今の利益は犠牲の上に成り立っている。

犠牲となっている部分は、グローバル化したので見えないだけだ。我々は知らず知らずのうちに搾取している。
資本主義は、犠牲を不可視化する。

今も我々の知らない地域で続く搾取があり、その搾取が限界まできた。

外部を使い尽くした現代が「人新生」だ。

グローバル・サウス
グローバル化によって被害を受ける領域・人々のこと。
SDGsでは、この被害から守ることができない可能性が高い。


 SDGs...持続可能な開発。技術開発によって環境問題を解決するという考え方

しかし、現代は搾取のペースが回復のペースを上回っている

また、技術の普及には時間がかかる。

技術開発では、環境問題を解決し切れない

加えて、技術開発は新たな環境問題を引き起こす


生産過程のコストに注意!
電気自動車の問題点はリチウムイオン電池だ。
製造には大量のレアメタルを使用し、バッテリーも大型化していく。

電気自動車の普及によって削減できる二酸化炭素排出量はわずか1%に過ぎないのだ。


気候変動
二酸化炭素の排出量では、日本世界第5位

世界の富裕層トップ10%が世界の二酸化炭素排出量の50%を占める

この人々が排出量削減に向けて努力すると排出量は3分の1も減少させることができる。
日本人にとっても人ごとではない。日本人のほとんどは、排出量の上位20%に入っているのだ。


脱成長・定常型経済への移行
脱成長とは、「平等」と「持続可能性」を目指すということ。資本主義では、地球環境の延命はできても治療はできない。

なぜなら、資本主義には「利潤獲得」という性質があるからだ。
市場原理主義によって、「希少性」が作り出された

これまで、あらゆるものが商品化されてきた。

ものに価値をつけることで希少性を付与したのだ。
公富の私財化は生活の質を意図的に犠牲にする。水などの公共財(公富)も商品化される現在。

本来は自然界に潤沢にある水でさえ、ペットボトル飲料として販売されている。
商品価値の創出で金儲けができる。
そこに生まれるのは使用価値とは別の価値だ。架空の価値と言っても良い。
資本主義こそが希少性を生み出すシステムなのだ。
自身にかかる負荷を外部に転嫁し、最後まで止まることなく進み続ける。

第3の道「コモン」

公共財自分たちで民主主義的に管理するという考え方。

水・電力・住居・医療・教育などの領域に及ぶ。
「脱成長コミュニズム」の提唱。地球を「コモン」として管理し、「地球=大地」を持続可能に管理するシステムを作ることを目指す。

経済成長を手放すために
1.労働者たちを資本家から切り離す
2.資本家による独占を解体する

というステップが必要だ。

労働と生産の変革

必要なことは5つ

1.「使用価値」の観点で仕事を見直す
2.必要のないものは作らないことで、労働時間が減り生活の質を上げる
3.新たな労働価値の創出
4.生産過程民主化し、労働者が生産にまつわる意思決定を行う
5.エッセンシャル・ワークの重視し、ケア労働の社会的価値を向上させること。

感情に関わる労働である保育士・医療現場・教師・介護などのケア・コミュニケーションが必要な領域は、これらはマニュアル化・機械化が困難な分野であり、システム化によるスピードアップができない。

これらの価値を引き上げることによって、必然的に経済が減速する。

すると、利潤を追い求める資本主義は、形を変えざるを得なくなる。


ブエン・ビビール(buen vivir)
エクアドルの先住民の言葉。「良く生きる」の意。我々は、先住民の知恵からもっと学ぶべきだ。


実例紹介
スペイン・バルセロナのフィアレス・シティ(恐れ知らずの都市)という取り組みが紹介されている。この都市で打ち出された「気候非常事態宣言」は、労働者・市民・専門家の共同執筆のよるものだ。

この取り組みは、国境を越えて都市間の連携体制が整えられつつある。

アフリカ・南米・アジアの70カ国以上に広がっている。
グローバル・サウスから学ぶ姿勢も見習うべき点である。

常識をひっくり返せ!

資本主義を超えていくための方針は3点。
1.生産のコモン化
 生産手段を共同管理
2.ミュニシパリズム
 国境を越えた共同体の連携
3.市民議会
 市民がオープンに議論する場

3.5%が社会を変える
3.5%の人が行動すれば、社会が変わる。あなたが3.5%の人になれ!


感想

資本主義は希少性を生み出すシステム。資本家の働き方がまさにこのシステムを象徴している。

委託・外注によって自身にかかる負荷を他人に移す。

利潤獲得のために労働者を搾取するシステムだ。

それが悪いことだとは思わない。

システムの中で最適解を求めたらそうなってきたというだけの話だ。

そこで善悪を論じることにさしたる価値はない。


資本家が増えることが、富の再分配につながるのではないか。
そのためにまず、資本家の絶対数を増やす。

多くの人がもっと貪欲に稼ぐことを求めて行動しても良いのではないかと思う。

資本家たちにも様々な価値観がある。

それが広がっていくことで、様々な価値観に触れる機会が増える。

多くの人に稼ぐチャンスと経験を!


本当の豊かさって何だろう?作られたものではない、自分だけの価値観を見つめ直したい。

それぞれの幸福がある。物質的な豊かさを手放せる時代になった。
人としての本来の欲求とは何だろうか?

資本主義を押し進めてきた成長欲求って悪いことなのだろうか?

成長欲求を手放した人生において、何を目的として生きていけば良いのか?

生存欲求は自然なことだ。

現代においてはそれが変形して、金(資産・財産)がないと死ぬという刷り込みがされている。

資本主義はそれに気付くための通過点なのではないか?


きっと、この本が売れた理由はそこにある。
世の人々は、答えを欲しがっている。豊かさの氾濫する時代で迷子になっている。
答えはすぐそばにある。誰かに教えてもらうものではない。
自分で見つけ出すものだ。

資本主義はその答えを曇らせた。
今まさに、与えられた価値観を手放す時。

資本主義はゲーム。
そのゲームを楽しむ中で、本質を理解したい。
理解すれば手放せる。


アクションプラン

まず自分から余分な仕事をやめる(労働環境の改善)
情報を調べ、発信し続ける
他の視点での主張も調べてみる(資本主義肯定派の意見)

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