先日、『資本主義の宿命』という本を読んだ。
なかなかの良著だった。前半は経済学の歴史を紐解きつつ資本主義のメカニズムを解説する内容で、後半は「福祉」をテーマにした議論が展開されている。特に興味深かったのは後半の内容で、福祉が実は資本主義社会を維持するために必要不可欠なパーツの一つであることを改めて考えさせられた。
良著。前半は経済学の歴史を紐解きながら資本主義を形成するメカニズムを解説する内容。後半は福祉がテーマなっていて、これが資本主義社会のマストなパーツの一つだということがよく分かる。この手の本の中では予備知識なしでも比較的読みやすい方だと思った。おすすめ。https://t.co/2PubAmE2Y5
— よだか(夜鷹/yodaka) (@yodakablog) August 6, 2025
読後の感想として、福祉という制度は、富の再分配によって社会を安定化させるという一般的なイメージとは別に、実は資本家側が労働者や一般大衆を一定の枠組み内に収めておくための「ガードレール」のような仕組みだと思った。
資本を持つ側が、資本を持たない側を完全に追い詰めず、「ある程度心地よい檻」の中に閉じ込めておくことで、反発や抵抗を防ぎ、結果的に自らの富を守ることができる。その仕組みの極致が福祉制度なのではないだろうか。
これは、いわば「緩やかな支配」と言い換えることもできるかもしれない。
国家や文明の盛衰について学ぶ中で、資本主義だけではなく、あらゆる社会システムに共通のパターンがあることにも気づいた。社会が成熟し、制度が整備されるフェーズに入ると、現状維持が優先され、成長や変革への意欲は低下する傾向がある。歴史を振り返ってみても、社会制度が高度化され安定したときほど、その国家や文明は衰退に向かい始めることが多い。
福祉の充実というのは、まさにそのような衰退や停滞期への移行を示す兆候の一つではないだろうか。制度が整い、競争が抑制され、人々が社会の仕組みに安住してしまうことで、徐々に社会全体の活力が失われてしまう。
一方、今の自分自身を振り返ると、まだまだ体も心も元気であり、強い個人主義的な思想を持っている。自分の力で何とかできない人間は弱いしダメだ、と思うことも正直少なくない。だが、これもまた、今の自分の人生フェーズだからこその思考かもしれないと考えるようになった。
自分の人生が進むにつれて、病気や挫折など「自力で何とかできない状況」に直面したときにはじめて、「福祉」や「相互扶助」の必要性をリアルに理解するのかもしれない。
つまり、人生のフェーズによって最適な考え方や価値観は変化するのだ。
若くエネルギッシュなときは個人主義が最適解であるかもしれないが、やがてそのフェーズが過ぎれば、協調や相互扶助という社会的な考え方が、人生を穏やかに安定させてくれる可能性もある。
大事なのは、どちらの考え方も絶対ではなく、その時々の状況や自分の人生フェーズによって柔軟に変えていくことではないだろうか。資本主義や福祉を通じて、そんなことを深く考えさせられた。
本書はAudible版もある。耳で聴いても十分理解できる構成になっているので、隙間時間に聴いてみても良いかも。
