どうも、よだかです。
今回は「利己的な遺伝子」やさしく解説の第10回。
生物観を大きく揺るがすベストセラーの本書。
第10章のテーマは「互恵的利己主義」。
生き物がお互いに利益のあるような行動をとるのは何故なのか?
それは、遺伝子を後世に繋ぐ上で、理に適った行動だからです。
やはりここでもテーマとなるのが、”遺伝子の利己性”。
本章では、仲間を守るための行動が実は自身の利己性からくるのだという説明が展開されます。
また、共生というシステムについても迫っていきましょう。
この本・本記事を読んで欲しい人
・利己的な遺伝子を読んでみたい
・生物の起源を知りたい
・進化の本質を理解したい
自分のために仲間を守る
例えば、群れで暮らす鳥の生態に着目してみましょう。
彼らのうち1羽が、上空を飛ぶ鷹を見つけると、群れの仲間に届くように警戒の声をあげます。
すると、群れの仲間は一斉に隠れたり逃げたりします。
”利己性”という観点から考えると、自分1羽だけが隠れたり逃げたりすれば良いはずなのに、どうして仲間を守ることが”利己性”の証であると言えるのでしょうか?
それは、群れの仲間と近しい遺伝子を共有しているからです。
もし、仲間が鷹に襲われて全滅してしまったら、自分1羽だけが生き延びても、遺伝子を残すことができなくなります。
”遺伝子の利己性”という観点から見ると、「近しい遺伝子」を守ることが最善の戦略なのです。
仲間を守る行動が、実は遺伝子的には”利己的”であるという観点は、非常に興味深いですね。
警戒すると得な理由
警戒の声を上げると、それが天敵の耳に届く可能性ももちろんあります。
できれば、じっと動かずに、敵に発見されないようにしていたい。
けれども、仲間が見つかってしまエバ、当然自分の身にも危険が降り注ぐことになります。
もし、自分が運良く生き延びたとしても、仲間の多くが命を落とす事態になれば、子孫を残すことができなくなる。
警戒の声を上げるのは、その声で敵に見つかるリスクよりも、仲間の多くが助かる可能性が高いからこそ。
事実、そういった形質を持つ個体が生き延びてきたからこそ、警戒の声を上げる個体とそれに反応して逃げたり隠れたりする個体が存在するのです。
自分に注意を向けると得な理由
一方、敢えて自分に注意を向けることで、危険から身を守る戦略もあります。
ガゼルなどの動物に見られる「ストッティング」と呼ばれる高く飛び跳ねる運動です。
それを、天敵の前で敢えて行うのです。
自分を襲うかもしれない相手の前で、わざわざ目立つ行為に及ぶだなんて不思議だと思いませんか?
実はこの行為も、理に適っているのです。
これは「自分が元気で健康であること」を相手に示し、「自分はこんなに元気なのだから、逃げ切る体力がある。追いかけても無駄だ」ということを示していると言われています。
真社会性昆虫
蜂などの昆虫類には、”女王”を中心としたコロニーを形成するタイプのものがいます。
この特性を”真社会性”と呼びます。
生殖・産卵をするのは、1匹の女王だけ。
そして、他の個体の全てが、コロニー形成のためのワーカーとなるのです。
これらの昆虫は、独自のシステムのもとで、遺伝子をつないでいく戦略を確立しています。
その点を詳しく見ていきましょう!
不妊のワーカー
このコロニー内では、ワーカーと呼ばれる個体は、生殖能力を持ちません。
生殖能力があるのは、女王のみ。
実は、女王とワーカーには遺伝子的な違いはありません。
女王になるかワーカーになるかは、幼体の頃にどのように養分を与えられたかが重要です。
その個体の成長過程において、栄養を豊富に与えられた個体が、次代の女王となるのです。
オスの発生
真社会性昆虫のコロニー内では、オスの発生条件は非常に特殊です。
なんと、未受精卵がオスになるのです。
そのため、オスの遺伝子は母親個体のものを100%継承していることになります。
蜂においては、女王蜂が生涯一度の”受精のための飛行”を行います。
そこで出会ったオスからもらった配偶子で、一生分の産卵をすることになるのです。
オス個体の希少さと特殊さが際立つ社会ですね。
メスの発生
一方、メスは受精卵から発生します。
つまり、雌には父親がいるのです。
そして、女王以外は全て不妊のワーカーとして一生を送ります。
幼虫の世話をするもの、花の蜜を集めるもの、巣を作るもの、外敵と戦うもの、、、。
真社会性昆虫はそれぞれの個体に明確な役割があり、コロニー全体が”遺伝子を後世につなぐシステム”として機能しているのです。
相利共生
ミトコンドリアの乗り物
相利共生というのは、お互いの利益のために別種の生き物同士が利益を与え合って生きている状態のこと。
「ハキリアリと一部の菌類」や「掃除魚と大型魚」などの関係性が挙げられます。
ところが、これは異種間に限ったことではありません。
もっと小さな視点で見てみることも可能です。
私たちの細胞一つ一つには、ミトコンドリアという小さな粒が入っています。
ミトコンドリアはエネルギーを生産する機関なのですが、その起源を辿ると進化のずっと初期の頃に私たちの祖先の細胞と連合した”共生バクテリア”だったことが分かっています。
ミトコンドリア以外にも、細胞の中にはさまざまな働きをする期間が備わっていて、その起源を辿ると、ミトコンドリアと同じく”共生バクテリア”だったようなのです。
つまり、私たち自身も”共生的な遺伝子たちの巨大なコロニー”なのです。
ウィルスは流浪の民
これに対して、ウィルスは”遺伝子コロニーから離脱した”遺伝子と言えるかもしれません。
ウィルスは、純粋なDNAでできていて、周囲にはタンパク質の衣をまとっているだけ。
そのため、単独では存在できず、例外なく寄生性の存在です。
このようなウィルスは、逃亡した反逆遺伝子から進化したもので、精子や卵子といった通常のシステムに媒介されることなく、生物の体から体へ直接空中を旅する身の上になったとも言えます。
この見解が正しいとすれば、私たちは自身のことを”ウィルスのコロニー”とみなすこともできます。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
他者を守るための行動が、実は自分自身の遺伝子を繋いでいくための戦略であるということをまとめました。
また、新社会性昆虫のテーマにして、彼らの遺伝子生存戦略を考察しました。
加えて、”相利共生”というシステムをクローズアップすると細胞レベルでの理由づけができることも明らかになりましたね。
次回、第11章のテーマは「ミーム」。
人間の作る「文化」について、まとめていきます。
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