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【我々が生存機械である理由】利己的な遺伝子 やさしく解説Part.8【リチャード・ドーキンス】

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どうも、よだかです。

今回は「利己的な遺伝子」やさしく解説の第8回。

生物観を大きく揺るがすベストセラーの本書。

第8章のテーマは「世代間の争い」。

この章では、親子の間で繰り広げられる駆け引きも遺伝子の利己性に基づくものであることが解き明かされていきます。

親は贔屓(ひいき)の子供を作るべきなのか?

子供が取るべき最善の戦略とは?

親・子双方の視点から事実を読み解くことで、親子の個体同士の関わりがちょうど良いバランスを取り合っていることが理解できるようになります。

この本・本記事を読んで欲しい人

・利己的な遺伝子を読んでみたい

・生物の起源を知りたい

・進化の本質を理解したい

贔屓(ひいき)の子供を作る理由

状況によっては、親はある特定の子供を贔屓(ひいき)した方が良い。

これは、自己の遺伝子が生き延びる確率を高める確率が高い場合においてです。

具体的には、”子どもが遺伝子を残す可能性が自分の2倍以上”であると確信できる時です。

なぜなら、子供は親の遺伝子の50%を受け継いだ存在だから。

自分の半分を持っている個体なので、その個体には自分の2倍以上の働きをしてもらうことで、親の遺伝子を残す確率を100%まで引き上げるのです。

もちろん、これは理論上の数値ですし、基準自体がその生物の特質や環境によって変化することは明らか。

しかし、親が特定の個体を贔屓(ひいき)する理由は、遺伝子の利己性によって説明ができます。

親子の争い

世代間の争いを読み解く上で重要なのは”親と子の双方の立場”から事実を読み解くこと。

親子間の争いには、どちらが有利になるかといった結論はありません。

どちらも最善の策を講じた上で、ちょうど良いバランスが保たれる地点があります。

本書以前の考察では、どちらか片方の立場からしか考察がされてこなかったのです。

親と子、それぞれの立場から、取るべき最善の戦略を見ていきましょう。

親:自立したらすぐに手放したい

親の基本戦略は、子供を自立させること。

自立とは、子孫を残せる成熟した個体に育つこと。

そのために、せっせと子どもの成長に資源を投資します。

例えば、親鳥がヒナに餌を運んでくること。

1羽でも多くのヒナを成熟した個体に育てたいので、親鳥は”どのヒナが餌が足りていないのか”を正確に見切る力が求められます。

ひなが満足しているか、飢えているかのサインを的確に見切って行動できる遺伝子が親個体に引き継がれていくことになるのですね。

その一方で、資源を投資しても自立の芽が出ないヒナには投資をしないという判断ができることも重要です。

繁殖能力を獲得できないと判断したら育てない、ということです。

遺伝子を残せない個体に投下した資源を無駄にしてしまうわけにはいかないのですから。

子:できるだけ資源を確保したい

子どものとる戦略は、親からできるだけ資源を確保すること。

他の兄弟の個体よりも、多くの資源を確保できれば、成熟した個体になれる確率が高まります。

例えば、鳥のヒナなら、大きくさえずって親鳥から餌をもらう確率を高めること。

他の個体よりも抜きん出て自分の存在をアピールできれば良いのです。

ところが、ここでも”アピールのバランス”が求められます。

仮に、全ての兄弟を出し抜いて、自分だけが生き延びたとしましょう。

兄弟の生き残る確率のある程度は確保しておかないと、自分が成熟した個体になっても繁殖できなかった場合に、その遺伝子が途絶えてしまうリスクが残ります。

兄弟は、自己の遺伝子の50%を分かち合う存在。

”兄弟が遺伝子を残す可能性が自分の2倍以上”であると確信できる範囲内で、自己アピールをするべきなのです。

カッコウのヒナとツバメのヒナ

カッコウという鳥は、托卵(たくらん)という戦略を取ります。

これは、他の鳥の巣に自分の卵を産み落とし、そこで自分の雛を育ててもらうというもの。

卵から孵ったカッコウのヒナは、巣の中にある他の卵を巣の外に放り出してしまうので、仮の親鳥からの資源を独占することができます。

興味深いのはここから!

研究者がツバメのヒナの卵でも同じ実験をしたところ、なんと、ツバメのヒナもカッコウのヒナと同じように、他の鳥の卵を巣の外に放り出すという行動が見られたのです。

これは、”他者の卵を巣の外に放り出せ”と命じる遺伝子が、ツバメのヒナにも刻まれているということ。

環境が変われば、今まで見られなかった行動様式が発現する可能性があるのです。

他者独自の行動だと思われていたものが、実はそうではなかったという点は非常に興味深いですね。

環境を変えることで、生物としての行動様式が変化して、思いもよらない可能性が開花するかもしれません!

まとめ

最後まで読んでくださってありがとうございます。

・場合によっては、ひいきの子供を作った方が良い

・親は、多くの子を自立させたい

・子は、兄弟を生かしながら自分の生存率を上げたい

ということをまとめました。

親と子の間における様々なコミュニケーションが、遺伝子の利己性に則ったものだということが伝わったかと思います。

次回、第9章のテーマは「雄と雌の争い」。

「性別の異なるもの同士が取りうる最善の戦略」についてまとめていきます。

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