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【小さな”救い”の物語】仮想人生【はあちゅう】

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どうも、よだかです。

今回紹介するのは、はあちゅうさんの小説「仮想人生」です。

とても面白くて、一気に読みました!

この作品、本当に面白かったので、ぜひ映像化してほしい!

筆者はブロガーで作家のはあちゅうさん。

本書を読んだのをきっかけに、ブログも拝読!とても面白かったです。

(時々出てくるイラストも可愛い!)

ブログ:はあちゅうのお買い物日記→https://ameblo.jp/mofu-everyday/

 

物語の舞台は、Twitter。

SNSを題材にした群像劇です。

登場人物は、ユカ、鉄平、直人、裕二、愛の5人。

それぞれがTwitterの裏アカウント(本来の自分とは別名義のアカウント)を持っています

心の寂しさを埋めるためだったり、ナンパするためだったりと目的も違います。

ネット上でやりとりをするもう一人の自分。

それぞれの思惑があって、別々に行動している彼らがちょっとずつ関わり合って物語が紡がれていきます。

現実と仮想の境目はどこにあるのか?

本書の魅力は、5人分の人生をちょっとだけ覗けること!

物語の登場人物は、5人がそれぞれに違った「満たされなさ」を抱えています。

その正体に気づいている人もいれば、物語を通してそこに向き合っていく人もいます。

ストーリーを通して、5人それぞれに小さな救いがあることも良いな、と思いました。

本書の感想を

「人物紹介」

「仮想空間のリアリティ」

「人は、自分のことを一番知らない」

「本当の幸せは、もう持っている」

の4点でまとめていきます。

登場人物(ネタバレあり)

ユカ

結婚3年目。

旦那のために生きてきた。人生に寂しさを感じている。

その寂しさを埋めるために、Twitterに裏アカウントを作る。

ちょっと子供っぽい部分があるのも魅力。

すぐにネガティブなことを考えてしまうが、メタ認知も早い。

寂しさは、人では埋まらない。自分で埋めるしかないのだ。

鉄平

ナンパ師。イケメン。

女の子との絡みがステータス。

ユカとの交流を通して、自身の価値観を考え直すことになる。

朝マックで、マックグリドルのセットは鉄板!

なんだかんだ言っても、結構繊細なところがある。

自信とは、他者の存在で埋めるものではない。

直人

大学生。絵が上手い。

Twitterに投稿した絵がバズって、有名人になる。

どこか淡々とした雰囲気もある。

ラスト間近で、ユカに感謝を伝えられて良かった。

物語の中で、一番救われた人物かも。

言葉も感情も、その場でちゃんと伝えないと手遅れになってしまうのだから。

裕二

大学生。デリバリーホストの仕事に真剣に取り組んでいる。

ユカとはリアルでの知り合い。

フォロワー数8万人のTwitterアカウント「暇な医大生」の中の人。

パクリツイートであることが問題視され炎上。アカウントが凍結に追い込まれる。

アカウント凍結と雇い主の失踪をきっかけに、勉強に集中するようになる。

まぁまぁ救われた人物の一人。

Twitterの裏アカウントを利用して童貞ハントをしている。

過去のトラウマで、過食嘔吐が常態化している。

傷つく前に離れる。人を信用できない。

そうなった経緯と、そこに向き合ってく過程が読みどころ。

もう一度、人を信用してみようと決意する。

最も救われてほしいと思った人物。

仮想空間のリアリティ

これからの時代は、リアルの不足を埋めるためのバーチャルが加速していくと思います。

コミュニケーションの場が、バーチャル空間に広がっていくいく流れは止まりません。

けれども、それはあくまでリアルを補完するという役割においてです。

なぜなら、私たちは肉体を持っているからです。

心と体は深く繋がっているので、心の働きを生み出すのは肉体です。

私たちの心に感動をもたらしてくれるのは、実際に目で見たものや、肌で触れて感じたものなのです。

だから、心をバーチャルで埋めるのは難しい。

バーチャル空間でできるのは、あくまで心を満たす手助けです。

バーチャル空間に居場所を求めても良い。

大切なのはリアルとのバランス。

せっかくそこでしかできない体験があるのなら、その体験を掴みに、思い切って飛び込んでみるのはアリです。

例え「裏アカウント」であったとしても、それはかけがえのない自分の一部なのです。

人は、誰かの前で必ず自分を演じています。

様々な場面で、演じる自分は少しずつ違います。

本当の自分というのは、演じ分けている自分の集合体なのだと思いました。

どんな自分も、かけがえのな自分の一部として受け止めてあげたいですね。

人は、自分のことを一番知らない

登場人物は、みんなそれなりに冷静です。

大きな感情の波に飲まれて自分を見失うシーンは出てきません。

ユカは常にどこか冷めた様子だし、鉄平もドライに振る舞っています。

直人は、友人とのやり取りする自分を冷静に捉えているし、裕二が炎上に苛立つ自分を自分で諌めるシーンには思わず感心してしまいます。

愛も、人生経験が豊富なだけあって、どこまでも自分自身の在り方に理由を見出しています。

自分の行動や思考を客観的に捉えて、自分を納得させようとしたり、他者の行動を冷静に観察したり、、、。

そうやって客観的な視点を持っていると、自分のことがよく分かっているように感じます。

けれども、それで本当に自分のことを分かっていると言えるのでしょうか?

客観というのは、あくまで自分自身の内側から生じたもので、どこまでいっても主観から出ることはできません。

彼らがTwitter上に作った「裏アカウント」は、本当の自分の気持ちを少しでも逃してあげたかったからなのでしょうか?

自分が行っていることが、どれだけ自分自身の望みを反映したものなのか。

私たちがそれを知るのは、他者とのやりとりを通してこそです。

そもそも、自分自身という捉えが思い込みなのです。

自分の姿を見ているのは、周りの人。

自分がどういう人なのかを認識しているのも、周りの人。

私たちは、環境との差異によって、自分の在り方・姿形を認識しているのです。

自分のことを知りたいからこそ、人は関わりを求めるのだと感じます。

それが、リアルであろうとバーチャルであろうと、自分を知る手がかりになるのは間違いありません。

本当の幸せは、もう持っている

物語のラストは、非常に印象的です。

ユカは真っ直ぐに未来を見ています。

大きな問題は解決していないかもしれないけれど、ユカの中では何かが吹っ切れた様子。

自分の望むことに薄々気づいていて、それが見えてきたからなのでしょう。

自分自身が一人の人間として生きていくことの大切さ。

自分が自分のことを好きなことに、理由なんていらない。

今日を丁寧に生きることが、自分を好きになっていく営み。

当たり前の日常を、心の底から尊く思って生きる。

そんな日々の積み重ねが、自分の人生を価値のあるものにしていく。

満たされない何かに注目するのは辞めて、今あるものの輝きを見つめてみる。

日々の中に、幸せはきっとある。

そう信じることができたからこそ、ユカは自身の幸福を確信できたのです。

まとめ

最後まで読んでくださってありがとうございます。

登場人物それぞれに、小さな救いがある物語。

彼らに救いをもたらしたのは、彼ら自身の中にある小さな優しさです。

みんながちょっとずつ誰かのことを想って生きていけたら、世の中もちょっとずつ良いことが増えていく

読んだ後、ちょっとだけ前を向いて歩いていこうと思える温かさが心に残ります。

その”ちょっと”の繰り返しが、人生を素晴らしいものに変えていってくれる

望んだ未来に向かうには、自分自身がその舵取りをしていくこと!

おすすめの小説ですので、ぜひ手に取ってみてください。

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