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【値上げは悪いことではない!?】安いニッポン「価格」が示す停滞【中藤 玲】

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こんにちは、よだかです。

今回は、中藤 玲さん安いニッポン「価格」が示す停滞の紹介です。

百円均一、ワンコインランチ、一万円を切るテーマパークの入園料、、、。

私たちにとっては当たり前のこれらのことが、実は日本の経済成長に制限をかけていることをご存知でしょうか?

本書は、日本経済新聞社で働く著者が日本の経済の最前線で得た情報と知見をまとめた本です。

様々なデータから、日本経済の危機的状況を伝えてくれる充実した内容!

著者の知見だけでなく、各界の識者の知見もまとめられていて、大変有益な本です!

日本で働く全ての人に届いてほしい1冊です。

著者プロフィール

著者の中藤玲さんは、日本経済新聞の記者。早稲田大学政治経済学部を卒業後、米ポートランド大学に留学。2010年に愛媛新聞社に入社し、編集局社会部で働く。2013年に日本経済新聞社に入社。編集局企業報道部などで、食品、電気、自動車、通信業界やM&A、働き方などを担当。企業や雇用などの情報に触れる最前線で活躍する方です。

著者インタビュー「安さ」に喜んでいる場合ではない 中藤玲著『安いニッポン 「価格」が示す停滞』

この本を読むと分かること

・日本の経済状況がどれほど危機的な状況にあるのか

・なぜ、危機的な状況に陥ってしまったのか

・日本と世界での経済活動の捉え方の違い

・私たちは、今後どのように過ごすべきか

本記事では、本書の内容の一部と、そこから得た気づきをまとめていきます。

値上げの常識を疑え

物やサービスを安く購入できるのは、一見良いことのように思えますよね?

ところが、安さを突き詰めることは、経済成長を邪魔するのです。

安いことが当たり前になると、消費者は価格の上昇に否定的な意見を持ちやすくなります。

勤め先からの賃金が増えていないのに、価格だけが上昇すれば、その商品は売れなくなります。

同じ品質の商品なら、より安いものを買いたいと思うのが自然なことだからです。

日本では、この20年間デフレが続いていて、これが日本の経済に悪循環を生んでしまいました

負のループ

①企業が値上げできなくなり

②企業が儲からなくなったので

③労働者の賃金は上がらない。

その結果、④消費が増えず

⑤物価も上がらない。

日本の労働賃金はこの30年間上がっていません。

ところが、世界の国々の労働賃金は上がっています。

最も顕著な数値に注目すると、同年齢で見る国際的な給与格差は最大2倍の開きが見られるところもあります。

賃金が多ければ、それだけ消費活動も盛んになることは明らかです。

それに比べて、日本の賃金は全く上昇していないのが現実。

つまり、世界基準で見ると、日本の賃金は下がっているのです。

国際的な競争力が落ちることによって、国内の企業はますます国内向けの商品を展開せざるを得なくなります。

どこかでその流れを断ち切らないと、日本の経済の未来は先細りしていくばかりです。

賃金が上がらず、消費は落ち込み、価格を上げない企業文化はますます加速していく、、、。

この25年間で、日本の購買力は4割も落ち込みました。

日本経済が抱えている固定の文化は、安定を生み出すものとは程遠いものになってしまっているのです。

日本と海外の常識のズレを示すエピソードで、特に象徴的だと感じたものがあります。

それは、「ニューヨークタイムズでガリガリ君のCMが取り上げられた」ことです。

2016年、ガリガリくんの25年ぶり10円値上げのCMが放送されました。

一見すると、謝罪広告のような印象を持つCMですが、この潔さがネット上で受けて、値上げ当初は売り上げ本数が1割ほど伸びました。

このCMと反響を、ニューヨークタイムズでは「日本は景気低迷で物価が上昇していないため、企業の値上げが重要ニュースになる」という点を驚きをもって伝えました

値上げそのものを、マイナスに捉える日本。

値上げを経済活動を活気づけたり、強い消費活動を反映させたりするものと捉えている米国。

国内で過ごすだけでは、このギャップに気づくことはとても難しいでしょう。

生産者へ還元される仕組みが整っていない現状、自分への所得水準を考えると、値上げは困るというのが消費者の本音。

企業努力に目を向けようとしない消費者の捉え方にも問題があるといえます。

企業には、消費者が受け入れやすい価格設定を考えることが求められる一方で、消費者である我々も、今一度、価格について考える必要があるのです。

人材の買い負けが起こる

この悪循環が続く中で、私が最も危険だと感じたのは、「人材の買い負けが起こる」ことです。

IT系の産業において、世界から大きく出遅れてしまった日本。

例えば、中国の電子決済の導入開始は2004年でした。

一方、日本での電子決済の導入は、ここ数年の間にようやく話題になってきたというところ。

決済の簡略化は、そのままビジネスチャンスへの着手スピードに繋がります

経済的に沈みゆく日本で真っ当に働いていても仕方がないと感じた優秀な人材は、ビジネスチャンスを海外に見出します。

すると、伸び代のある海外の企業や投資先へ自分のリソースを投下するようになります。

自国内での経済発展の勢いは、国の発展を支える重要な要素です。

マンパワーが国外へ注がれることで、日本の力は相対的に低下していきます。

これ以外にも、土地・アニメ・生産技術などの様々な分野で、日本が海外に安く買われてしまい、いっそう生産力を落としてしまうということが起こり続けているのです。

日本で働くことに何らかのメリットが見出せる法整備・仕組みづくりは早急の課題です。

よだか流・深堀り

日本というお国柄

グローバル化が進む中で、経済圏は国を跨いで大きく広がりました。

自宅にいながら、世界中のビジネスにアクセスする環境が整っています。

ところが、多くの日本人はそのことをまるで知らない。

海外で展開されるビジネスのあり方や、そこで通用している常識、、、。

知らないことには対処のしようがありません。

経済活動という面で捉えると、島国文化が悪い方向に働いてしまったと言えるでしょう。

日本に住んでいる限り、我々は海外の文化に疎くなりがちであるということを理解しておく必要があります。

海外からの文化を取り入れ、それを改良・発展させることで、文化を発展させてきた日本。

歴史上で見ても、日本という国自体が、イノベーションの第一波を生み出しにくいことは明らかです。

私たちにできるのは、得意なフィールドで正しい努力をすること。

海外の文化の発展や成長にアンテナを張って、常に理解を示すとともに、改良できそうな部分を柔軟に受け入れていく

インターネット環境の整った現在、経済活動という面においては、様々な情報を集めることがとても簡単になりました。

国際的な基準という大きな物差しを持って、より広い視野で経済活動を捉えられるようにあるべきです。

淘汰される日本経済

経済活動は、生き物の循環と似ている部分が数多くあります。

お金は血液とは言い得て妙。

どこか一部の流れが悪くなると、その部位が腐ってしまうのは体も経済も一緒です。

日本経済という部位世界経済という大きな体の一部として引きの視点でみると、淘汰されるべき部位にあたるのかもしれません

それは、悪いことなのではなく、新しい器官・部位に生まれ変わろうとしている過程なのです。

確かに、一時的には痛みを伴うでしょう。

雇用の機会損失、賃金の低下、会社の倒産やそれに伴う家庭の経済状況悪化、、、。

政府は、国民が安心して暮らせる経済面へのセーフティネットを整えるとともに、その存在をもっと大々的にアピールする必要があります。

そして、国民一人一人も、その恩恵を黙って受け取っているだけでいたり、不満を述べたりするだけでなく、きちんと勉強して、具体的にどうして欲しいのか・どうすべきなのかを適切な伝え方で示していくべきなのです。

国家と国民。

どちらもバランスよく高め合っていく関係性を作っていくことができなければ、日本は大きな流れの中で淘汰されてしまうでしょう。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回紹介した内容は、本書のごく一部です。

数ページ読むだけでも、日本の経済状況がどれほど危機的な状態にあるのか理解することができます。

そして、なんといっても本書の魅力は、様々な分野の識者がそれぞれの知見を述べていること!

経済観をアップデートするきっかけになること間違いなしの本書。

是非とも手に取って読んでみてください!

今後もITと経済を学ぶべし!

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