どうも、よだかです。
あなたは、日本の一次産業にビジネスチャンスが隠れていることを知っていますか?
デジタル化が進む時代において、何を言っているんだと言われそうですが、その思考こそが落とし穴です。
なぜなら私たちの肉体を生きながらさせているのは、毎日の食事や普段寝泊まりする家だったりするからです。
どれだけテクノロジーが進歩しようと、肉体という縛りからは抜け出せません。
本書「日本のリアル」を読むことで、モノに直接触れる大切さを知ることができます。
出版は2021年。
養老孟司10冊読破企画の10冊目は「食・農・漁・林」の4領域のスペシャリストとの対談本!
この本・記事を読んで欲しい人
・一次産業のビジネスモデルを知りたい
・一次産業の可能性を知りたい
・養老孟司さんが好き
食:普段の食事にみる日本の変化
「自分」を大切にして、「個」を優先する
これは、近年行われた家庭の食事に関する調査から分かったことです。
そして「ご馳走」とは「好きなものだけを食べて、嫌いなものは食べない」ことという捉えに変わってきています。
食品の破棄量もかなりの量で、日本の現状は食糧過剰の状態です。
過剰なのは、食糧以外の”モノ”にも当てはまります。
敗戦後の日本は「モノ以外を信じられない世代」の集まりでした。
それまで信じてきた「日本」という国が戦争に敗れ、多くの国民が信じてきたものが崩れ去ったからです。
そこで「モノを信じる世代」の人たちが懸命に努力して「モノづくりの得意な日本」というブランドを作り上げたのです。
ですから、モノが満たされた現代、「モノづくりの得意な日本」は終わりを迎えて、次の時代へとシフトしていく時期なのかもしれません。
環境とは、自分の周りであり、もっと正しくいうと自分自身である
田んぼで取れた米を食べた私たちは、緩やかに自然と繋がっていると言えます。
身の回りの環境は、どこかで私たちとのつながりを持っている。
そうやって考えてみると、日々の食事に注目することは、私たちの身体性を見つめる上でものすごく近いところにあるヒントであることが分かります。
農:行政との相性
農業は可能性の塊
この章からは、ビジネスを起こすヒントになることをかなり濃く学べました。
スイカ農業で大成功したことをきっかけに、そのビジネスモデルを「米作り」に転用。
ここでは、一度成功させたビジネスモデルを別の分野に展開させていく手法が学べます。
日本における米づくりは、実は効率化が進んでいなくで、生産方法も慣例に倣って行われている地域が多いのです。
そのため、従来の方法を変化させていくことで、生産効率を大きく高めることができるのです。
大切なのは、新しいやり方に馴染めず困っている初心者を助けることを主旨とすること。
どんな分野でも、今まで守ってきたことを急に変えようとすると反発が起こります。
まずは、そこに携わっている人の理解を得られるよう、自分が懸命に働きかけて小さくても良いから結果を出すことで信頼を積み上げることが大切です。
もう一点、重要なのは、環境に働いてもらうことです。
本書では、イトミミズの糞の効用について述べています。
イトミミズの糞は、田んぼに生える雑草を減らします。
雑草の種を糞が覆ってしまい、芽が出なくなるからです。
そして、糞には稲の肥料としての効果もあり、稲の生育を助けてくれるそうです。
人の手を使わなくても、環境の力を最大限活用することで、高い効果をあげることができるのです。
人工の肥料を使って稲を育てるよりも、コストが抑えられて環境にも優しい取り組みです。
また、田んぼは天然のろ過装置としても機能します。
土の中の微生物が、川の水に含まれる有害な細菌を食べてくれるのです。
エコロジーについてはまだまだ未知の領域があり、これが「農業は可能性の塊である」所以です。
しかし、現行の制度は農業改革とは相性が悪いので、一部制度の見直しが求められます。
漁:継続するのは「好き」なこと
好きで好きでしょうがないから続けられる
牡蠣(かき)の養殖に携わる方との対談です。
物事全体のつながりを見ることの大切さがよく分かります。
ダムを解放した時のエピソードは印象的でした。
山の中にあるダムの水には栄養分がせき止められているそうで、ダムの水を解放したら、海で取れるマグロの量が増えたとのこと。
ここから学べるのは、物事の原因と結果を単純化しないということ。
単純にダムを解放すれば、漁獲量が上がるという図式で捉えるのは短絡的です。
漁獲量を高めるには、山という資源に着目し、栄養分豊富な水が海に流れ込むようにするために、森林を保護して、川を豊かな資源に変える取り組みをしていくということが大事になってきます。
この取り組みには時間がかかります。
海で獲れるもののために、森林を豊かにするという発想は、地球全体を大きな生態系と考えていなければ、なかなかできない発想だと思います。
目の前の利益に囚われて、問題解決のポイントを見誤ることは避けたいですね。
継続力の大切さもキーポイントですね。
牡蠣(かき)産業に従事して、なんとその道20年!
とんでもない長さです。
そのくらいの時間を本気でコミットしたらそりゃ成果になるよねって思います。
継続は力なり。
でも、多くの人はびっくりするくらい継続できません。
継続すること自体も一つの才能なのでしょう。
けれども、それを言い訳にしないで好きなことにたどり着く努力をした人がやっぱり成功する人なのです。
誰がなんと言おうと、自分の信念を持って進んでいける道は、自分で開いていくしかありません。
林:長期スパンのビジネスモデル
最低でも2、3年先を見ざるを得ない
林業に携わる最大のメリットです。
日本において林業が活気づいたのは、住宅が不足していたから。
これはビジネスの本質を的確に現しています。
つまり、世の中の不足に気づけるかどうかということです。
日本の林業は成功できないと言われていた時期がありました。
海外の木材の方が品質が良く、国内の木材は売れないだろうと考えられていたからです。
けれども実際にはそんなことはなく、日本の木材は合板(重ね合わせて使う)として加工されて売れたのです。
合板は燃えにくく、家屋の素材として海外でも売れました。
必要な人たちがいるということを考えて、商品を作っていくこと。
シンプルですが、短絡的に考えてはいけない。
自分なりの理屈を持って、商売をすることが大切です。
また、ここでも生態系についての言及があります。
植林をするときに大切にしていることは、生産したい木材となる木だけでなく、低木や中くらいの高さの木もバランス良く育てていくということだそう。
健全な人工林は、豊かな生態系が再現できるものが理想。
限られた種類の木だけを植えた不健全な人工林は、生態系を破壊し、長い目で見て良い結果を生みません。
「漁」の項目でも紹介しましたが、生態系の大切さを意識することは、一次産業における最優先課題なのですね。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
一次産業からビジネスの可能性を探るつもりでまとめてみました。
対談形式だからこそ、筆者の受け答えから様々なことを学びとれる構成になっていたと感じます。
対談形式の本の良さは、会話系で読みやすいということと一緒に思考を回している気分になれるということですね。
ただ、それは筆者の考えの中核をなすものがある程度分かっていないとできません。
養老孟司先生10冊読破企画の最終巻に相応しい本でした。
内容自体は、対談者の言葉が多めですので。
養老先生の本を何冊か読んでみてから、本書を読むのをお勧めします。
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