こんにちは、よだかです。
最近、「確率思考(アニー・デューク著)」という本を読みました。良著でした。
本書の内容を一言でまとめるなら、「意思決定の質を上げるための指南書」です。
意思決定を結果と切り離して評価することの大切さを説明するのが本書の趣旨ですが、私はこれまで、結果(勝ち負け)に引きずられすぎて、意思決定そのものをきちんと評価できていなかったことに気づかされました。
日頃から仮想通貨botの開発をしている私にとって、この点は非常にクリティカルで、本書を通して得た学びや気づきは、今後のbot開発の進め方そのものを見直すきっかけにもなりました。
本記事では、本書の内容を整理しつつ、そこから得た気づきや考えたこと、そして今後どのようにbot開発へ活かしていくのかをまとめていきます。
bot開発に限らず、「より良い意思決定をできるようになりたい」「そもそも意思決定とは何なのか」と考えている方にとっても、何かしらのヒントになる部分があるかもしれません。
0. はじめに
「勝ち負け」で思考が歪むことに気づいた
意思決定というものは、結果が出た瞬間から評価されてしまう。
勝てば正解、負ければ間違い。
少なくとも私は、長いあいだそうやって物事を判断してきました。
仮想通貨botの開発をしていると、日々の判断はすべて結果として返ってきます。
エントリは良かったのか、閾値は適切だったのか、ロジックは筋が通っていたのか。
それらは最終的に「勝ったか」「負けたか」という形でしか見えません。
でも、同時に違和感もありました。
勝ったトレードを振り返ると、必ずしも納得できる判断ばかりではない。
一方で、負けたトレードの中に「判断自体は悪くなかったのでは?」と思えるものもある。
それなのに、評価はすべて結果に引きずられてしまう。
この違和感の正体を言語化できずにいたときに読んだのが、
アニー・デュークの『確率思考』でした。
本書は、「どうすれば勝てるか」を直接教えてくれる本ではありません。
むしろ、「勝ち負けが不確実な世界で、私たちは意思決定をどう扱うべきか」という、
一段手前の問いに正面から向き合った本だと感じました。
読み進めるうちに、
「私は結果ばかりを見て、意思決定そのものをほとんど評価してこなかったのではないか」
という気づきがありました。
そしてそれは、bot開発に限らず、日常のさまざまな判断にも当てはまる話でした。
この記事では、
本書の内容を整理しながら、
私自身がどこで思考を歪めていたのか、
そして今後どのように意思決定と向き合っていこうとしているのかをまとめていきます。
専門的な知識がなくても読める内容だと思いますし、
「最近、自分の判断に自信が持てない」「結果に一喜一憂しすぎて疲れている」
そんな方にとっても、立ち止まって考えるきっかけになれば嬉しいです。
なお、本記事で扱っている内容は、
アニー・デューク著『確率思考』を読みながら、
私なりに「意思決定をどう扱うか」という視点で整理したものです。気になる方は、原著も手に取ってみてください。
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1. 人生もトレードも「チェス」ではなく「ポーカー」
私たちは無意識のうちに、人生や仕事、トレードを「チェス(=完全情報のゲーム)」のようなものとして扱ってしまいがちです。
すべての情報が盤上に揃っていて、最善手を選べば必ず勝てる。
失敗したのは、どこかで間違った手を指したから――そんな世界観です。
でも、アニー・デュークははっきりと否定します。
私たちが生きている現実は、チェスではなくポーカー(=不完全情報のゲーム)だ、と。
ポーカーでは、相手の手札は見えません。
デッキにどんなカードが残っているのかも分からない。
限られた情報をもとに、その時点で最もマシだと思える選択をするしかありません。
そして、どれだけ合理的な判断をしても、普通に負けることがあります。
これは人生や仕事、そしてトレードと非常によく似ています。
未来の市場は見えないし、情報は常に不完全です。
「正しい判断をしたから勝てる」「間違った判断をしたから負けた」
そんな単純な対応関係は、ほとんど存在しません。
にもかかわらず、私たちは結果が出た瞬間から、
その判断を「正解だった」「間違っていた」と断定してしまいます。
勝てば良い判断、負ければ悪い判断。
この思考は直感的で分かりやすい一方で、意思決定の質を正しく評価することを難しくします。
ポーカー的な世界では、本来こう考えるべきです。
「その時点で持っていた情報を前提にすると、この判断は妥当だったか?」
「結果はさておき、期待値の高い選択だったか?」
評価すべきなのは、結果ではなく判断が行われた瞬間のプロセスです。
本書が繰り返し強調するのは、この視点の転換です。
結果は運や偶然に大きく左右される。
しかし、意思決定のプロセスは、少なくとも改善していくことができる。
そして長い時間軸で見れば、より良い意思決定を重ねた人が、
より良い結果に近づいていく。
仮想通貨botの開発をしていると、この構造はよりはっきりと見えてきます。
どれだけロジックを詰めても、負けるときは負ける。
一方で、今振り返れば危うい判断でも、たまたま勝ってしまうこともある。
それでも私たちは、つい結果に引きずられてロジックを評価してしまいます。
「チェスではなく、ポーカーである」
この認識を持つことは、
勝ち負けに一喜一憂する思考から一歩距離を取り、
意思決定そのものを冷静に見直すための出発点になります。
次の章では、
このポーカー的な世界観を前提にしたうえで、
「結果」と「意思決定の質」をどう切り離して考えるべきかを、
もう少し具体的に見ていきます。
付録:本書のマインドマップ
本書の内容を、自分なりに
「意思決定をどう扱うか」という軸で
整理したのが、以下のマインドマップです。

2. 結果と意思決定の質は、切り離して考える
ポーカーのような不確実な世界では、
「良い判断」と「良い結果」は必ずしも一致しません。
それにもかかわらず、私たちは結果を見た瞬間に、
その意思決定の良し悪しまで決めてしまいがちです。
勝てば正解、負ければ失敗。
この評価軸は分かりやすく、感情的にも納得しやすい。
しかし本書では、この考え方こそが意思決定の質を下げる最大の原因だと指摘されています。
たとえば、情報が限られた状況で合理的な判断をしたとしても、
運が悪ければ負けることはあります。
逆に、根拠の薄い判断でも、偶然うまくいってしまうこともある。
それでも結果だけで評価してしまうと、
「良い判断」が修正され、「悪い判断」が強化されてしまう可能性があります。
これは学習の観点から見ると、かなり危険な状態です。
本来改善すべきなのは、結果ではなく、
その結果を生んだ意思決定のプロセスのほうだからです。
アニー・デュークは、意思決定を評価するときに
「その判断が行われた時点に立ち戻る」ことの重要性を繰り返し説いています。
つまり、結果を知る前の自分が持っていた情報や前提条件を基準に、
その判断が妥当だったかどうかを考える、ということです。
この視点を欠いたまま振り返りを行うと、
私たちは簡単に後知恵バイアスに陥ります。
「結果を知っている今の自分」から見て、
過去の判断を評価してしまうため、
本来その時点では知り得なかった情報まで織り込んでしまうのです。
仮想通貨botの開発でも、同じことが起こります。
ある戦略で負けが続くと、「このロジックはダメだった」と結論づけたくなる。
一方で、たまたま勝ちが続くと、その戦略を過剰に信頼してしまう。
しかし、どちらも結果に引きずられた評価であり、
意思決定そのものを正しく見ているとは言えません。
本書が示しているのは、
「勝ったか」「負けたか」ではなく、
「その判断は、当時の情報を前提にすれば合理的だったか」という問いです。
この問いを立て続けることで、
私たちは初めて意思決定の質を少しずつ改善していくことができます。
結果と意思決定を切り離して考えることは、
感情を完全に排除することではありません。
むしろ、感情に引きずられて誤った学習をしてしまうことを防ぐための、
ひとつの思考の補助線だと感じました。
次の章では、
この考え方をもう一歩進めて、
意思決定を「正解/不正解」の二択ではなく、
どのように評価し、更新していくべきかについて考えていきます。
3. 感情は意思決定の敵ではなく、誤作動の原因
意思決定の話をすると、よく
「感情を排除しろ」
「冷静になれ」
と言われます。
私自身も、それ自体は間違った教えではないと思います。
しかし本書を読んで印象的だったのは、
アニー・デュークが感情そのものを敵視していない点です。
問題なのは感情の存在ではなく、
感情が意思決定や評価のプロセスに“誤作動”を起こすことだと整理されています。
私たちは感情を完全に切り離して判断することはできません。
嬉しい、悔しい、不安、安心――
これらは意思決定の背景として、常に存在しています。
本書が警告しているのは、
その感情が、結果の解釈や学習の方向を歪めてしまうことです。
代表的なのが、後知恵バイアスです。
結果を知ったあとで
「やっぱりそうなると思っていた」
「最初から分かっていた」
と感じてしまう現象。
実際には、その時点では分からなかったはずのことまで、
あたかも予測できていたかのように再構成してしまいます。
このバイアスが厄介なのは、
過去の意思決定を正しく評価できなくなる点にあります。
「結果を見た今の自分」が、
「当時の自分」を裁いてしまう。
そうして、判断の改善につながらない反省だけが積み重なっていきます。
仮想通貨botの開発でも、これは頻繁に起こります。
負けた直後は、
「このロジックは浅かった」
「もっと慎重にすべきだった」
と感じやすい。
逆に勝った直後は、
「この判断は正しかった」
「方向性は合っている」
と自信を持ちすぎてしまう。
しかし、どちらも感情に引きずられた評価です。
悔しさや安堵といった感情が、
意思決定の質そのものを覆い隠してしまいます。
本書で繰り返し語られているのは、
感情を否定するのではなく、
感情が入り込む場所を限定するという発想です。
判断そのものは人間が行う。
しかし、その判断の評価は、
できるだけ感情から距離を取った形で行う。
そのための具体的な方法として提示されているのが、
「判断理由を事前に言語化しておくこと」や、
「結果が出る前の視点に立ち戻って評価すること」です。
これにより、感情が評価をねじ曲げる余地を減らすことができます。
感情は、意思決定を妨害するノイズではありません。
ただし、放置すれば誤作動を起こす可能性がある。
だからこそ、意思決定と評価の構造を整理し、
感情が入り込む場所と、そうでない場所を意識的に分ける必要があります。
次の章では、
この考え方を踏まえたうえで、
意思決定を「正解/不正解」という二択ではなく、
どのように段階的に評価し、更新していくのかについて掘り下げていきます。
4. 「結果が出る前」に意思決定を評価するという発想
ここまで見てきたように、
結果と意思決定を切り離し、
感情による誤作動を減らそうとすると、
ひとつ避けて通れない発想があります。
それが、「結果が出る前」に意思決定を評価する、という考え方です。
私自身、この発想は本書を読むまでほとんど意識していませんでした。
意思決定の評価は、結果が出てから行うもの。
そう考えるのが当たり前だと思っていたからです。
しかし、それこそが後知恵バイアスや結果バイアスを生み出す温床でした。
結果が出た後に振り返ると、
私たちはどうしても「結果を知っている視点」から過去を見てしまいます。
その時点では知り得なかった情報まで含めて判断を裁き、
「やるべきだった」「やらなければよかった」と結論づけてしまう。
こうした振り返りは、次の意思決定を賢くするどころか、
かえって思考を歪めることがあります。
そこで本書が提案しているのが、
意思決定を行った時点で、その判断を評価できる状態にしておくという考え方です。
具体的には、「なぜその判断をしたのか」を、
結果が出る前に言語化しておくことが重要になります。
たとえば、ある選択をするときに、
「どんな情報を根拠にしているのか」
「どの前提を信じているのか」
「何が起きれば、この判断は間違いだったと言えるのか」
といった点を、あらかじめ書き出しておく。
こうしておけば、結果が出たあとに振り返る際、
「その判断は、その時点の情報を前提にすれば妥当だったか」
という問いに立ち戻ることができます。
評価の基準が、結果ではなく、判断のプロセスに置かれるのです。
仮想通貨botの開発に置き換えると、
これは非常に実践的な考え方だと感じました。
なぜこの閾値にしたのか。
なぜこのロジックを採用したのか。
どの条件が崩れたら、この戦略は見直すべきなのか。
こうした点を事前に言語化しておくことで、
結果に振り回されずに検証を進めることができます。
もちろん、すべてを完璧に言語化できるわけではありません。
直感や経験に基づく判断も多く含まれます。
しかし重要なのは、直感を否定することではなく、
その直感を「検証可能な仮説」として扱える形にしておくことだと思いました。
結果が出る前に意思決定を評価するという発想は、
判断を縛るためのものではありません。
むしろ、後から自分自身を守り、
より良い学習につなげるための仕組みです。
次の章では、
こうした評価を「正しい/間違っている」という二択で終わらせず、
どのように段階的に更新していくべきか、
確率や信念の扱い方という観点から考えていきます。
5. 確率は白黒ではなく、グラデーションで更新する
意思決定を結果と切り離し、
さらに結果が出る前に評価できる状態をつくろうとすると、
次に立ちはだかるのが「どう更新するか」という問題です。
私たちはつい、判断を白黒で評価してしまいます。
正しかったか、間違っていたか。
続けるか、捨てるか。
しかし本書が扱っている世界では、
こうした二択は現実をうまく捉えきれません。
ポーカーのような不確実な世界では、
一度の結果で判断の正しさが確定することはほとんどありません。
合理的な判断でも負けることはあるし、
不合理な判断でも勝ってしまうことがある。
それなのに白黒で評価してしまうと、
学習はどうしても荒くなります。
アニー・デュークが提示しているのは、
「確率」や「信念」を段階的に更新するという考え方です。
ある判断が正しそうだと思う度合いを、
少しずつ上げたり下げたりしていく。
結果は、その更新に影響を与える情報のひとつに過ぎません。
この考え方を取り入れると、
「捨てる」という判断の位置づけも変わってきます。
戦略を完全に廃棄するのは、
理論的な前提が崩れたときや、
致命的な反証が出たときなど、
限られたケースに絞られます。
それ以外は、
信念の重みを下げたり、
試行の頻度を落としたりする、
いわば“調整”の対象になります。
仮想通貨botの開発に置き換えると、
これは非常に重要な視点だと感じました。
一定期間試してうまくいかなかった戦略を、
即座に「失敗」と断定して捨ててしまう。
あるいは、少し勝てただけで
「正解だった」と過剰に信頼してしまう。
どちらも、白黒評価がもたらす極端な反応です。
グラデーションで更新するという発想に立つと、
問いの立て方が変わります。
「この戦略はダメだったか?」ではなく、
「この戦略に対する確信度は、どれくらい下がったか」。
「続けるべきか?」ではなく、
「どの程度の重みで持ち続けるべきか」。
この違いは、意思決定の負担を大きく下げてくれます。
白黒を迫られないことで、
早すぎる断定や、過度な執着を避けられるからです。
そして何より、
学習の過程そのものを継続しやすくなります。
本書を通して印象に残ったのは、
確率や信念を更新する行為そのものが、
意思決定の中心に据えられている点でした。
結果はゴールではなく、
更新のための材料のひとつに過ぎない。
そう考えると、
勝ち負けに対する見え方も自然と変わってきます。
次の章では、
こうした考え方を個人の中だけで完結させるのではなく、
他者や情報との関係の中で、
どのように支えていくべきかについて見ていきます。
6. 「説明できない=間違い」ではない
確率や信念をグラデーションで更新していこうとすると、
もうひとつ向き合う必要がある問題があります。
それは、「説明できないもの」をどう扱うか、という点です。
意思決定や戦略を評価するとき、
私たちは無意識のうちに
「説明できない=間違っている」
と結論づけてしまいがちです。
特に論理や再現性を重視する分野では、
この傾向はより強くなります。
しかし本書を読んで印象に残ったのは、
アニー・デュークが
説明できない状態そのものを、即座に否定していない点でした。
説明できないことと、間違っていることは、必ずしも同じではありません。
ポーカーのような不確実な世界では、
情報が不足していること自体がごく普通に起こります。
観測回数が足りない。
ノイズが大きい。
評価指標が適切でない。
そうした理由で、
「なぜそうなったのか」を十分に説明できない場面は多々あります。
このとき重要なのは、
説明できない理由を切り分けることです。
仮説そのものが間違っているのか。
それとも、まだ判断するだけの情報が揃っていないのか。
この二つを混同してしまうと、
本来残すべき芽を、早い段階で切り落としてしまうことになります。
仮想通貨botの開発では、
この判断は特に難しいと感じます。
一定期間動かしてみたものの、
エッジがあるのかどうかがはっきりしない。
理屈としては筋が通っている気がするのに、
結果が伴わない。
こうした状況で、
「説明できないからダメだ」と切り捨ててしまうのは簡単です。
しかし本書の考え方に沿えば、
ここで行うべきなのは断定ではなく、
信念の重みを下げる、という判断です。
完全に捨てるのではなく、
保留にする。
試行の頻度を落とす。
評価の仕方を見直す。
こうした選択肢を残しておくことができます。
「説明できない」という状態は、
単に“不確実性が高い”ことを示しているだけかもしれません。
その不確実性をどう扱うかこそが、
意思決定の技術だと感じました。
また、説明を求めすぎること自体が、
後付けの合理化を生む原因になることもあります。
結果が出たあとに、
無理やり筋の通った説明を与えてしまう。
そうして作られた物語は、
次の意思決定にとって必ずしも有益とは限りません。
説明できないことを、
そのまま「分からない」として保留する勇気。
そして、分からないままでも、
信念の重みを少しずつ調整していく姿勢。
本書を通して、
そうした態度の重要性を改めて認識しました。
次の章では、
こうした考え方を、
実際のbot開発にどう落とし込んでいくのか。
具体的な視点や行動レベルで整理していきます。
7. bot開発にどう取り入れるか
ここまで、本書の考え方をもとに
意思決定と結果の関係や、評価の仕方について整理してきました。
では、これらを実際のbot開発にどう取り入れていけばいいのでしょうか。
私にとって一番大きかったのは、
「botの挙動」ではなく「判断の理由」を主語にするという視点の転換でした。
これまでの私は、
勝ったか負けたか、
PnLがどうだったか、
期待した動きをしたかどうか、
といった「結果」や「挙動」を中心に振り返っていました。
もちろんそれ自体は重要なのですが、
それだけでは意思決定の質はなかなか上がらないと感じています。
本書を踏まえて意識するようになったのは、
次のような問いです。
なぜこの閾値にしたのか。
なぜこのロジックを採用したのか。
どの前提を信じて、その設計に至ったのか。
そして、どの条件が崩れたら、この判断は見直すべきだと考えているのか。
これらを、結果が出る前の段階で言語化しておく。
完璧である必要はありません。
仮説レベルでも、直感に近い表現でも構わない。
重要なのは、
「なぜそうしたのか」を後から辿れる状態にしておくことです。
また、戦略やロジックの評価を、
白黒で決めないことも意識しています。
勝てなかったから失敗、
勝てたから正解、
という判断はできるだけ保留し、
「この戦略に対する確信度はどう変わったか」
という形で捉えるようにしています。
たとえば、
一定期間試して明確なエッジが確認できなかった場合でも、
即座に捨てるのではなく、
信念の重みを下げる。
試行頻度を落とす。
観測指標を変えてみる。
そうした調整を挟むことで、
学習の連続性を保つことができます。
もうひとつ大きな変化は、
「説明できない状態」を許容するようになったことです。
エッジがある気がするが、まだ言葉にできない。
理屈は通っているが、データが足りない。
こうした状態を、
「失敗」ではなく「保留」として扱う。
これは、思っていた以上に精神的な負担を減らしてくれました。
bot開発は、試行錯誤の連続です。
不確実性が高く、正解が事前に分かることはほとんどありません。
だからこそ、
結果に一喜一憂するよりも、
判断の質を少しずつ良くしていくほうが、
長い目で見て健全だと感じています。
本書を通して得たのは、
「勝つためのロジック」ではなく、
負けながらでも前に進み続けるための考え方でした。
その考え方を、
ログの取り方や振り返りの視点、
戦略の扱い方に少しずつ反映させていこうと思っています。
次の章では、
こうした実践を通して感じた、
botterとしての適性と、
結果を出すこととの距離について、
もう少し個人的な視点から整理してみます。
8. botterとしての適性と、稼げることは別問題
本書を読み終えて、
そしてここまで内容を整理してきて、
改めて感じたことがあります。
それは、botterとしての適性があることと、実際に稼げることは必ずしもイコールではないという点です。
私は、思考を整理したり、構造を分解したり、
仮説を立てて検証していく作業自体は、比較的得意なほうだと思っています。
bot開発という営みも、性格的にはかなり合っている。
少なくとも、「向いていない」と感じたことはありません。
しかし、向いていることと、結果が出ることの間には、
想像以上に距離がある。
本書を読んで、その距離を正しく認識できた気がしました。
これまでの私は、
botterとしての人格と、
一人の人間としての人格が、
かなり近い位置にありました。
botが負ければ、自分が否定されたように感じる。
うまくいかなければ、
自分の考え方そのものが間違っているように思えてしまう。
こうした状態では、
意思決定をドライに評価することが難しくなります。
結果に対する感情が強くなりすぎて、
本来見るべき判断のプロセスに、冷静に向き合えなくなるからです。
アニー・デュークの『確率思考』は、
この距離を適切に取るための考え方を与えてくれました。
結果はコントロールできない。
しかし、意思決定の質は改善できる。
そして、その改善は、必ずしも短期的な成果として現れるとは限らない。
botterとしての適性とは、
必ず勝てるロジックを作れることではなく、
不確実性の中で、
自分の判断を検証し続けられる態度を持てるかどうか。
本書を読んで、
そう考えるようになりました。
稼げるかどうかは、
市場やタイミング、運といった要素にも大きく左右されます。
それでも、
意思決定の質を少しずつ上げていく過程で、
結果が後からついてくる可能性を高めることはできる。
本書は、そのための現実的な指針を示しているように感じます。
この距離感を意識できるようになったこと自体が、
私にとっては大きな収穫でした。
結果に振り回されすぎず、
それでも判断を放棄しない。
その姿勢を保ちながら、
もう少し長い時間軸でbot開発と向き合っていこうと思います。
次の章では、
ここまでの話を踏まえて、
結果をコントロールできない世界で、
それでも私たちができることについて、
最後にまとめてみます。
9. コントロールできるのは結果ではなく、意思決定だけ
ここまで見てきたように、
私たちが生きている世界は、チェスではなくポーカーです。
情報は常に不完全で、未来は不確実。
どれだけ考えても、結果そのものを完全に支配することはできません。
それでも私たちは、
結果をどうにかコントロールしようとしてしまいます。
勝ちたい、負けたくない、失敗したくない。
その気持ちは自然ですが、
結果に執着しすぎると、意思決定の質はかえって下がってしまいます。
アニー・デュークの『確率思考』が一貫して伝えているのは、
コントロールできる対象を正しく見極めることの重要性だと感じました。
結果はコントロールできない。
しかし、意思決定のプロセスは、少なくとも改善していくことができる。
どんな情報をもとに判断したのか。
どの前提を信じて選択したのか。
その前提が崩れたら、どう修正するつもりなのか。
こうした問いに向き合うことは、
結果に左右されずに続けることができます。
結果をコントロールできない世界で、
それでも前に進むためには、
評価の軸を結果から意思決定へと移す必要があります。
勝ったか負けたかではなく、
「その判断は、その時点で妥当だったか」を問い続ける。
この姿勢こそが、長期的な学習を可能にします。
仮想通貨botの開発は、
この考え方を実践する格好の題材だと感じています。
日々の判断はすべて記録でき、
後から何度でも振り返ることができる。
結果がどうであれ、
意思決定の質に向き合い続けることができるからです。
結果が出ない期間は、どうしても不安になります。
自分の判断は間違っているのではないか。
努力の方向がズレているのではないか。
そう感じることもあります。
それでも、
意思決定の質を上げることに集中していれば、
少なくとも「何を改善すべきか」を見失わずに済みます。
本書を通して得た最大の学びは、
「正解を当てる力」よりも、
意思決定を扱う態度そのものが重要だという点でした。
結果に一喜一憂しながらも、
判断の質を少しずつ良くしていく。
その積み重ねが、
不確実な世界で生き残るための、
現実的な戦略なのだと思います。
次はいよいよ最後の章として、
本書を読んで得た気づきを改めて整理し、
今後どのように向き合っていくのかをまとめます。
10. おわりに
『確率思考』は、
何か新しいテクニックや、
すぐに使える必勝法を教えてくれる本ではありません。
それどころか、
「正しい判断をしても負けることがある」
という、少し受け入れづらい前提を何度も突きつけてきます。
それでも私にとって本書は、
これまで感じていた違和感に、
静かに言葉を与えてくれる一冊でした。
結果に引きずられすぎていたこと。
意思決定そのものを、
ほとんど評価できていなかったこと。
そうした点に気づけただけでも、
読む価値は十分にあったと感じています。
bot開発に限らず、
私たちは日々、大小さまざまな判断を繰り返しています。
その多くは、正解が分からないまま行われ、
結果だけが後から返ってきます。
だからこそ、
結果ではなく、意思決定の質に目を向ける姿勢が、
長く物事と付き合っていくうえで重要になるのだと思います。
本書を読んでから、
私は判断に対する向き合い方が少し変わりました。
勝ったか負けたかよりも、
「なぜそう判断したのか」を言葉にする。
説明できない部分は、
無理に結論を出さず、保留にする。
そして、信念の重みを少しずつ調整していく。
こうした変化が、
すぐに結果として現れるとは限りません。
それでも、
意思決定を扱う態度そのものが変われば、
見える景色も少しずつ変わっていく。
本書は、そんな長い時間軸の話をしているように感じました。
もし今、
結果に振り回されて疲れている人がいたら、
あるいは、
自分の判断に自信が持てなくなっている人がいたら、
『確率思考』は一度立ち止まるきっかけを与えてくれるかもしれません。
勝つための本ではない。
でも、不確実な世界で、
それでも前に進み続けるための本。
そんな一冊でした。
ここまで書いてきたように、
『確率思考』はトレード手法やロジックを教える本ではありません。それでも、意思決定を評価し続ける必要がある立場の人にとっては、
長く使える思考のフレームを与えてくれる一冊だと感じました。
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