どうも、よだかです。
あなたは、自分自身の価値基準がどこからきているのか考えたことはありますか?
今回紹介する「ハーバード白熱教室講義録」は、その根幹に迫っていくきっかけを与えてくれます。
著者は、マイケル・サンデル。
ハーバード大学の超人気教授の彼が「正義」というテーマで行った全12回の講義を文字に書き起こしたのが本書。
教授と学生たちの生きた対話が紡ぎ出す哲学への旅が非常にスリリングな内容です。
本記事では、その魅力と特に印象深かった部分を紹介していきます。
本書・本記事を読んで欲しい人
・マイケル・サンデルが好き
・哲学に興味がある
・自身の価値基準の源流を問い直したい
本書の魅力
なんと言っても、著者マイケル・サンデル先生の生き方が存分に味わえることですね。
人は”個”であり、”集団”です。
みんな違った考え方があり、その根拠はそれぞれの属している集団の性質に左右されています。
そして、個人の集まりが集団の性質を作っていきます。
サンデル先生は、まず、ベースとなる知識を共有させ、その上で学生たちへの様々な問いかけをします。
学生たちは、それぞれの意見を述べながらも、自身の考えの土台となっている部分に自然と疑問を持ち始めます。
そして、最後にサンデル先生が議論の中核にある問題をまとめて、次の講義へとつないでいくという構成。
哲学というものの役割をこれほどまでに期待感高く感じさせてくれる講義は、かつて存在しなかったはずです。
サンデル先生自身の考えもありながら、中核に当たる部分は、あくまで意見を述べる学生たちが自分達の力で迫っていく授業デザイン。
”教える”のではなく”考えさせる”。
講義というもののあり方についても、非常に発見の大きい展開にワクワクします。
当たり前のことをきちんと考えさせてくれるのが、哲学の良いところです。
一周回って元のところに戻ってくるのだけれど、以前よりもちょっと高いところに立てる。
サンデル先生の講義を受けて、自身の思考に「破壊と再生・創造」をもたらしてくれる素晴らしい本です!
「質の高いor低い」を決めるもの
自分が優れている存在だと感じさせてくれるものは、価値が高い。
レンブラントの絵やシェイクスピアの戯曲、、、。
その楽しみ方に深さが宿っているものは、ず〜っと人気ですよね。
これは、クリエイトのコツとも言えます。
ず〜っと楽しめるものをつくる。
クリエイターの視点からサンデル先生の講義を眺めてみると、人々が価値を認めているものへの共通点が分かります。
誰もが、自分を有能で価値ある存在だと信じたい。
自分自身の価値を創出してくれるものに、人は価値を見出すのです。
その意味では、私にとっての本書も価値のあるものだと言えます。
自身の思考をアップデートして、クリエイトの一助となっているのですから。
あなたが価値を認めているものの意義を深掘りすると、自身の価値観を支える土台が見えてきます。
また、他人が価値を認めるものの意義を深掘りすると、他者の価値観を支える土台が見えてきます。
サンデル先生は、本当に様々な切り口から、個人の考え方の土台となっている部分に迫っていくきっかけ与えてくれます。
「自分が自分を持っている」は真実か?
自分自身の肉体は自分の所有物である。
すると、その肉体に宿る自分自身の思考や権利も、自分が所有していると言えるのでしょうか?
これは、私有財産や自己所有という考えを深掘りするきっかけになります。
サンデル先生は、ジョン・ロックの思想がアメリカ建国の源流となっているという前提を疑い、学生たちに疑問を投げかけます。
ロックは「非所有物」に「労働」が加わると「所有物」になると述べました。
(ただし、他者のためにも同じものが十分に残されていることが条件ですが)
例えば、”土地の開拓”という「労働」が「所有権」を裏付ける根拠となります。
アメリカは、その建国の歴史において、ネイティブアメリカンの住む土地を開拓したという事実があります。
そのため、ロックの思想を建国の思想の源流とつなげることは、開拓者側からすると非常に都合が良いのです。
このように、私たちの考えの根幹には「自分が有利になるような思想を選ぶクセ」があるのです。
あなたが今信じている「正義」は、自分の立場を正しく見せるためのものではないのか?
お互いの「正義」の根拠に迫る対話こそがこれからの時代に必要になるのではないか?
そして、その対話を通して、それぞれの道徳観を理解し合うことが、問題を解決することよりも重要ではないのか?
サンデル先生の問いかけは、物事を解決することをゴールとしてはいません。
その問いの中を生きることそのものを目指しているのです。
まとめ
上巻だけでも、かなりスリリングな展開が満載です。
本書の本当の魅力は読んだ人でないと分かりません。
サンデル先生の講義を体感する中で、あなたの思考はどんどん回転し、非常に疲れるかもしれません。
哲学史に大きな影響を与えた哲学者たちの思想を解説するパートは、やや難解な部分もあります。
しかし、それを乗り換えて、ハーバードの学生たちが懸命に議論する中にどっぷりと浸かると、これまでとは全く違う世界が見えてきます。
本書を読むことで、これまでとは違った世界の見方ができるようになることは間違いありません。
サンデル先生の思考の概要を掴むための一冊としても大変おすすめの本書。
ぜひ手に取って読んでみてください!
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