思考力アップ 読書

【科学以外のメガネを持つべし!】自分の頭と体で考える【養老孟司 甲野善紀】

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どうも、よだかです。

今回紹介するのは、養老孟司さんと甲野善紀さんの対談本「自分の頭と体で考える」です。

養老孟司10冊読破企画の8冊目!

解剖学者・養老孟司と古武術の師範・甲野善紀さんの対談から紡ぎ出される思考の連鎖。

身体と思考についての考えを深めることのできる素晴らしい1冊!

両者の共通点を探しながら読むことができます。

対談形式なので、スッと読めるのも本書の良さです。

内容と感想をまとめていきます。

古武術と解剖学

私たちの思い込みの一つに「時間軸上に一直線に動く」というものがあります。

視点を外したり、増やしたりすることで並行処理ができるようになるという点は、思考も身体も一緒です。

頭は体のほんの一部でしかありません。

この部分だけで身体をコントロールできるわけがないのです。

脳も体全体の一部であるという意識でいることが大切ですが、これがなかなか難しい。

脳は、体全体を統制する器官であるという科学的な見方が常識になっているからです。

丹田に力を込めると体全体がうまく連動して働くというエピソードからも、脳が体の一部に過ぎないのだということを示しています。

なんだかよく分からない言語化できない部分には、物事の真理に迫るようなヒントがたくさん隠れているのです。

そういった意味では、言葉自体も方法論のひとつであると捉えることができますね。

 

物事を理解するときに、私たちは分かる範囲でしか分かろうとしません。

自分が変化するのを怖がるため、本能的に恐怖するようにプログラムされているからです。

変化したいのなら、感情はあくまで脳の作り出した感情であるという認識にアップデートしていく必要があります。

学歴社会が封建制度の揺り戻しだという考察も印象的でした。

実力はあってもそれを発揮できる立場が与えられないことにもどかしさを覚えていた層の人間が、学歴社会を作って自分達の力を存分に発揮できるようにしたのです。

これは、ゲームチェンジを考える上でも非常に面白い部分です。

力を発揮できない環境にいるのなら、環境そのものを新しくデザインし直せば良いのだという気づきを得ることができました。

スケールの大きさを見極めて、自分にできる範囲で環境をデザインしていくことは、心健やかに生きていく上でとても重要なことです。

レッテルを貼ったときには思考停止していないかどうかをよくよく考えてみる必要があるでしょう。

科学以外のメガネをかけて世の中を見渡してみると、物の見え方が大きく変わってきます。

科学は方法論のひとつに過ぎないのです。

日本という村落共同体

ルールが全てではありません。

ルールが存在することによって、思考はパターン化していきます。

多くの人が同じように行動できるようにするのがルールの役割なのですから、当然と言えば当然です。

このパターンから抜けるのが、面白いのです。

思い込みを外すのが”発見”です。

 

「説明してください」という言葉に隠された思考の罠に迫る件が特に面白かったです。

この言葉の裏には「説明してもらえたら、理解できる」という思い込みが隠されているのです。

正直そんなふうに考えたことなど一度もなかったので、とても驚きました。

「人並み」という言葉も私たちを縛り付けています。

この言葉自体が他者との比較を意識させ、自身の可能性に蓋をしてしまっているのです。

「スランプ」という言葉も同様です。

本来「今」の自分を生きるしかないはずなのに、過去にあった優れた自分を思い描いて、その比較から今の自分を貶める必要など全くないのですから。

私たちが頼る先は、自分の美意識です。

自分自身の拠り所を見失わないようにしたいものです。

自分の頭と身体で考える

「自分の頭で考えている人は1割もいないのではないか」との指摘があります。

学問すらも方法論に過ぎません。

学問は世界を知る術であり、それ自体が目的ではないのです。

学歴偏重の思考に陥っていると、こうしたことですら忘れてしまうのです。

日本の公教育では、宗教と哲学を教えません。

国というシステムを維持するためには、思考を縛り付けておく必要があるからです。

歴史を消すということもここに通ずることです。

事実としてあったことを、教科書や資料自体から削っていくことは人の思考を奪うのと同義です。

これは、ジョージョ・オーウェルの1984年にも通ずる現実です。

 

日本人は変わり身が早いが「伝統の」という言葉もよく使うとのこと。

これは「タテマエ」の文化があるからです。

初めから言っていることが本音と離れていることは珍しくありません。

だから、法の解釈をすることで都合よく行動するなんて事態が起こるのです。

防衛省の出している指針も「日本防衛協力ガイドライン」などと訳されていますが、原文は「ウォーマニュアル」です。

新「日米防衛協力のために指針(ガイドライン)」

こういったことを前提に考えると、日本が法治国家であるとは言えないということになってしまいます。

一歩間合いをとって日本を見る

民主主義社会であれば、人口は減少します。

逆に、貧乏であればあるほど子供は増えます。

これには人間の「権力欲」が関係しています。

人としての尊厳が保障されず権力欲が満たされていないと、個人の権力欲を向ける先として自分より弱い存在として「子供」が選ばれます。

無意識のうちに、権力欲は発揮されます。

「自主規制」という言葉も、典型的な権力の行使です。

後で都合の悪いことにならないように、”悪い”と判断される言葉は事前に削っておく。

意識していないだけで、日本のあちこちに権力を行使している事例が見られます。

厄介なのは、それを行使している本人がそれを権力だと認識していないということです。

日本の民主主義の中には、権力が巧みに分散されていて、多くの人はその構造に気づいていないのです。

 

日本人の特質の根底に「同化」の文化があります。

そのことを示す一例が、日本には「漢字の音訓読みがある」ということです。

一つの対象において複数の意味を認める。

しかも、漢字は中国から渡ってきた文化。

元々は音読みだけだった漢字に日本人の使っていた言葉である訓読みを当てた。

これはまさに、異文化を自国の文化に同化させてしまったと言えるのです。

 

一方、英語圏では「言葉で言えないものは存在しない」というスタンスです。

言葉が思考の源泉であり、存在の拠り所なのです。

そもそもの前提が違うのですから、西洋から入ってきた文化が馴染まないのは当然なのです。

西洋の文化を否定しているわけではありません。

違うという前提とそれを生み出している仕組みを理解して受け止めることが大切なのです。

不自由と自由のバランスを取るための良いヒントになりますね。

まとめ

最後まで読んでくださってありがとうございます。

対談形式の本書からは、生きた言葉が伝わってきます。

本文には「今話していて気づいたのだけれど、、、」となどの言葉が何度か出てきます。

やはり、対話によって思考が深まっていく過程を共有できるのが「対談本」の良いとことだなぁと感じました。

自分自身も本当の対話を通して、思考が深められると良いなと思います。

対談者の思考が深まっていく様子が魅力の一つでもある本書。

ぜひ手に取って読んでみてください。

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