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【感想・まとめ】生物はなぜ死ぬのか【小林武彦】

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こんにちは、よだかです。

小林武彦さんの「生物はなぜ死ぬのか」を読み終えたので、感想をまとめていきます。

生物学者の著者が”生物の死”について科学的な観点から解説する本書。

図や表も織り交ぜながら詳しく解説をしているので、データの処理が得意な方はより一層楽しめる内容です。

一方、私のようにテキストから思考を深めたいタイプの人にとっては、ややしんどく感じました。

後半は教育や社会の在り方についての考察も述べられていたので、その部分を読み込んでみるのもありです。

学術的な内容が中心で、科学的な考察が好きな方にはとても興味深い内容でもあります。

誕生、絶滅、死の仕組みと意味。そもそもなぜ私達人間は死ななければならないのか?

本書を読むと”死”についての理解が深まります。あなたの”世の中の見え方”が少しだけ変わるかもしれません。

死生観を深めたい方におすすめの1冊です

死すべきプログラム

筆者は”ターンオーバー(生まれ変わり)”こそが、地球の魅力であると述べています。

生物は「変化と選択」の果てに、死ぬようにデザインされています。

RNAとDNA、原核細胞と真核細胞、多細胞生物の発生と大量絶滅の歴史、、、。

途方もない時間をかけて、生物は”多様性”を獲得してきました。この”多様性”を担保するための仕組みが”死”なのです。

変化した新たな世代を作り出し、古い世代は消えていきます。少しずつ新たなもの作り変えられていく大きな流れの中に、私達は偶々存在しているのです。

生き物の歴史は”作っては分解し、また作り変える”ことの繰り返しです。

環境に適応した種がそれぞれに集団を作り、何らかの理由で絶滅しては残った種が繁栄してまた絶滅することの繰り返し。

現在、人間の活動によって引き起こされている生物の絶滅のペースは、過去最大級のものと言われています。

これまでは環境の変化により引き起こされてきた絶滅が、今では人為的な要因により発生しています。

なおかつそれが加速し続けているということは、憂うべきことです。

過去最大級の絶滅は、今後地球にどのような変化をもたらすのか全く分からないため、それを避ける努力は必要でしょう。

人もシステムの一部なのか?

しかし、人間の活動そのものも環境システムの一部だと考えてみるとどうでしょうか?

行き過ぎた環境破壊は、生態系からの自浄作用で淘汰される気がしてなりません。環境開発を進める中で発生する様々な公害や感染症、、、。

私達人間は環境を開発することで繁栄を遂げてきました。しかし、今やその開発が自分たちの生活環境を破壊することにつながっているのは明らかです。

踏み越えてはいけないラインを大きく踏み越えてしまい、自分たちの手で自身の絶滅を招こうとしています。

行き過ぎた環境開発は人間の絶滅につながるということも大きな流れの中にある必然です

地球という大きなシステムごと捉え直すと、人間の数が減るということも大きな流れの一部であるように感じます。

そもそも”生物”とは何なのでしょうか?あなたは”生物”と”無生物”の違いを説明できますか?

著者は、その違いを「単独で存在でき、それ自身で増えることができるかどうか」と述べています。

安定的に存在できて、なおかつ自己複製を可能とする存在が”生物”と言えます。

もっと簡単に言うと”生まれて、命をつないで、死ぬ”ということです。

人間の社会では”命をつなぐ”ということが必ずしも生殖に限ったことではなくなってきています。

教育・文化・芸術など”種としての繁栄”に貢献する方法がいくらでもあります。

文化の形成は、人間と他の動物を区別する一つの要素です。音楽や絵画などは、生存そのものに役立ちません。

しかし、人間の情緒に大きな影響を与えます。情緒を大きく発達させる手段を進化の中で積み上げてきたという点が人間の特異性です。

この可能性が広がってきた歴史を振り返ると”生物として生きる”ということの意味を他の動物と区別して考える必要がありそうですね。

「死の恐怖」からは逃げられない

生きている以上、”死”は必ず訪れます。ヒトとして生きる上で”死の恐怖”から逃れるのは非常に困難です。

なぜなら、我々の遺伝子には子孫を残す過程で”育ち切るまで見守る”というプログラムが施されているからです。

私たちが感情を持つのは種の生存のためです。

社会集団を形成して生き残る戦略において、他者への共感は欠かせません。

なんとなく群れたり、一緒にいると安心したり、仲間外れを不安に感じたり、、、。

これらは全て、集団で過ごすのに有利な特質です。

”死”は”共感”でつながっていた集団から切り離されることを意味します。

幸福感を与えてくれていた”繋がり”を喪失する恐怖が”死”を忌みごととして認識させているのです。

なればこそ、私たちは”死”を無闇に恐れるのではなく、自然に組み込まれている感情なのだと認識して、ネガティブな側面以外の捉え方を持っておく必要があるです。

私たちはどう生きていけば良いのか?

大きなシステムの中に組み込まれている”死”。

種としての生存戦略は”集団形成”であり、その過程で獲得した”感情”が”死”を恐れさせているという構造は、大変興味深いです。

本来”死ぬ”ということは、生物として”種が生きながらえるための最適解”であるのに、個体としては”死”が怖いだなんで奇妙な話です。

我々は長く生き延びたかったはずなのに、なんだかチグハグな感じがしませんか?

とはいえ、個体としての考えを捨ててしまうことは、最早”悟りの境地”。

私たちにできるのは、今の状態を改めて理解して受け入れることです。

そして、良い意味で”どうせ死ぬのだから足掻いても仕方ない””今日を精一杯生きよう”という気持ちを持つことです。

今ある時間を精一杯生きることで、個人としての幸福を追求することは決して悪いことではありません。

歴史を学ぶことの意義は”大きなスケールで考えられるようになる”ことです。

”生物”の歴史を知ることで、私たち個人の生きる歴史を別の視点から捉え直すことができるようになるのです。

全員が等しく、大きな流れの中にいます。

何十年もの人生は長く感じるかもしれませんが、生命の歴史からみるとほんの僅かな1地点に過ぎません。

それでも、一人一人が見たり感じたりすることには違いがあり、僅かな1地点に集積した個々の生き様はそれぞれに異なっています。

私たちは大きな流れの中に偶々生まれてここに存在するのです。

いずれは消え去る命ですが、だからこそその輝きはかけがえないものなのです。

まとめ

”死”を考えることは”生きる”ことを考えるとの似ています。

生物の歴史という観点から眺めてみると”死にもきちんと意味がある”のだということが分かります。

科学的な知見を得ることで、生き方の哲学にまで繋げて考えることができた内容でした。

学問は根っこの部分でつながっているのだなと改めて実感しました。やっぱり学問って面白いです。

本書の終盤では、これからの社会の在り方について筆者の見解が述べられています。

教育、老化、AIとの付き合い方など、基本的なことの大切さが身に沁みます。

読み応えのある内容ですので、お時間のある時にぜひ手に取っていただきたい本です。

科学的な視点から”死生観”をアップデートできること間違いなしの内容でした!


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