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【我々が生存機械である理由】利己的な遺伝子 やさしく解説Part.6【リチャード・ドーキンス】

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どうも、よだかです。

今回は「利己的な遺伝子」やさしく解説の第6回。

生物観を大きく揺るがすベストセラーの本書。

第6章のテーマは「遺伝子道」。

生き物は近しい遺伝子を持つ者に対して、親切な行動をとる傾向があります。

私たちは、親子、兄弟、親戚は、自然と親切に振る舞うことができますよね。

赤の他人と区別をしながら、血縁者をひいきしてしまうのはなぜなのでしょうか?

今回は、なぜこのようなことが起こるのかを解説していきます!

この本・本記事を読んで欲しい人

・利己的な遺伝子を読んでみたい

・生物の起源を知りたい

・進化の本質を理解したい

他者のために行動する理由

遺伝子の目的は、自分自身のコピーを繋いでいくこと。

他者のために行動するプログラムが、自己保存に有利に働くのであれば、その行動を取る傾向が強い個体が生き残ります。

その利己的な振る舞いが、結果的に利他的に見えるのです。

全ての行為は、自己保存のためのプラグラム。

生き物の持つ社会性すらも、プラグラムされた行動というのは驚くべきことですね。

ここからは、何を基準にそのプログラムが組まれているかということを解説していきましょう。

何を基準にプログラムされているのか?

他者のために行動する基準となるのは、大きく分けて5つ。

・近縁度

・平均寿命

・損得の見積もり

・母親寄りかどうか

・コロニーの規模とオス・メスの比率

順番に見ていきましょう。

※本記事では、人間をベースに話をまとめていきますが、他の生き物にも当てはまると考えて読んでみてください。

近縁度

まず、親子関係について。

これは、自身の遺伝子の50%を共有している個体です。

2人の親から生まれたあなたは、両親の遺伝子を半分ずつ受け継いでいます。

そして、あなたの子供も、あなたとあなたのパートナーの遺伝子を半分ずつ受け継いでいます。

兄弟関係や祖父母・孫などになると、親子ほどではなくとも、遺伝子的には共有している部分が多いことがイメージできるかと思います。

自己のコピーを共有する部分が多い個体に対して、親切に振る舞うことで、その個体の生存の確率が高まります。

すると、その遺伝子が後世につながる確率も高まっていく。

近縁の個体に対して親切に振る舞うことが、自己保存に有利に働くのです。

平均寿命

自分よりも年齢が若い個体に親切に振る舞う基準です。

同じ遺伝子を持った2つの個体のうちから1つを選ぶのなら、より長生きする個体の生存確率を上げるのが正解ですよね。

これは、年齢が若い個体の方が繁殖のチャンスが多いからです。

親が子の面倒をみるのは、この理屈をもとにしています。

だから、養育される側にある子が親の面倒をみることはありません。

生き物は、繁殖期待値の高い個体に投資しているのです。

血縁関係と平均寿命の両面から見ると、親子関係における”養育”という概念が、論理的に説明できますね。

損得の見積もり

過去の経験から導く”損得の見積もり”も重要です。

全てのケースにおいて、遺伝子にプラグラムされた通りに行動してるだけでは不十分です。

環境は常に変化のリスクを伴うもの。

もし仮に、絶対に変化しない環境というものがあれば、生き物の進化は止まることでしょう。

けれども、そんなことはあり得ません。

後天的に学習する能力である「記憶」を獲得したことで、変化する環境に適応して自身の生存確率を高めるとともに、集団内での適切な振る舞いをアップデートすることができるようになったのです。

母親寄りかどうか

生き物には、母親寄りの血縁関係にある者を注意深く見るプログラムが組み込まれています。

なぜなら、母親個体は、父親個体よりも遺伝子の繋がりを信頼できる要素が多いから。

母親は、父親の遺伝子情報を受け取って出産するため、ほぼ間違いなく自身の遺伝子の50%が我が子に受け継がれていることを確信できます

しかし、父親側から見れば、母親の産んだ子が自分の遺伝子を引き継いでいる保証はどこにもないのです

外見が似ているからといって、そのことが遺伝情報を引き継いだ証拠にはなりませんね。

たまたま似ている可能性だってあるのですから。

残酷な話ですが、疑おうと思えば、その父親が別の個体である可能性をいくらでも疑うことができます

これが、母親と父親の間にある圧倒的な現実の壁。

オスとメスでは、そもそも繁殖の戦略が全く異なるのです。

母方の親戚が、息子よりも娘の様子に気を配るのは、このことが原因でもあるのですね。

コロニー内でのオス・メスの比率

コロニーにおいて、オス・メスの比率も重要です。

例えば、ライオンの群れは、1頭のオスが複数のメスを従えるハーレム。

この群れにおけるオス同士では、兄弟である個体には親切に振る舞い、そうでない相手には攻撃的に振る舞った方が遺伝子をつなぐ確率が高まります。

なぜなら、オス個体は希少で、近縁のオス同士が争うと、近しいコピーを持つ遺伝子が減ってしまうから。

これは、ライオン以外の、さまざまな生き物に当てはまる考え方です。

その生き物が作る集団の規模とその中のオス・メスの比率が、親切に振る舞うことと攻撃することの境目を決定づけているのですね。

まとめ

最後まで読んでくださってありがとうございます。

今回は他者への親切な振る舞いの基準となる要素についてまとめました。

・近縁度

・平均寿命

・損得の見積もり

・母親寄りかどうか

・コロニーの規模とオス・メスの比率

当たり前に存在していることが、実は、遺伝子の利己的な戦略の到達点なのです。

生き物の行動が、非常に合理的であることが伝えられたかと思います。

次回、第7章のテーマは「家族計画」。

「家族という構造が、自己の遺伝子複製のためのシステムである」ということをまとめていきます。

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