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【なぜ“血縁”に優しくするのか?】『利己的な遺伝子』をやさしく解説|Part.6|リチャード・ドーキンス著

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こんにちは、よだかです。

今回は『利己的な遺伝子』やさしく解説シリーズの第6回

🧬 テーマは「遺伝子道」──
なぜ私たちは血縁者に対して親切なのか?

親子や兄弟、親戚には自然と親切に接してしまう。
けれど、赤の他人には少し距離を置く。
この“当たり前”の行動には、遺伝子の合理的な意図が隠れています。

🔁 前回(Part.5)の記事はこちら
👉 【攻撃】進化の中で生き残る戦略とは?


この記事・本をおすすめしたい方

  • 『利己的な遺伝子』をもっと深く理解したい方
  • 生物の“利他行動”の本当の意味を知りたい方
  • 行動の背景にある「遺伝子の設計思想」に興味がある方

他者に優しくするのは、結局“自分のため”?

一見「利他的」に見える行動も、
実は遺伝子の自己保存戦略の一部です。

✅ 「自分と同じ遺伝子を持つ他者を助けること」は、結果的に自分の遺伝子が残りやすくなる

だから、生物は「どの他者に親切にするか?」を遺伝子レベルでプログラムされているのです。


親切な行動の“5つの基準”

ドーキンスが提示する、親切に振る舞う基準は以下の5つ:

  1. 近縁度
  2. 平均寿命
  3. 損得の見積もり
  4. 母親寄りかどうか
  5. 群れの性比と規模

順番に見ていきましょう。


1. 近縁度(遺伝子の共有率)

親子は遺伝子の50%を共有。
兄弟や祖父母・孫とも、多くの遺伝子を共有しています。

だからこそ、近しい個体に親切にすることは、自己保存と同義

🧬 自分の“コピー”を生き延びさせるために、遺伝子は「親切の優先順位」を定めているのです。


2. 平均寿命(繁殖期待値)

同じ遺伝子を持つなら──

✅ より若い個体=長く生きて、たくさん繁殖できる

だから、親が子どもを守るのは当然。
逆に、子が親の世話を焼くことは少ないのです。

👶 投資すべきは「これから多くの遺伝子を残せる個体」


3. 損得の見積もり(記憶と学習)

すべてが“本能任せ”ではありません。

記憶によって──

  • 危険な相手を避ける
  • 信頼できる個体を助ける
  • 過去の経験から戦略を修正する

これが「学習」という進化の副産物。

🧠 遺伝子にプログラムされた“原則”に、環境に合わせた柔軟性を加えることで、個体の生存率がさらに高まったのです。


4. 母親寄りかどうか(信頼性)

遺伝子的に、母親は子どもが「自分の子」だと確信できます

でも、父親にはその確信がありません。

  • 母:確実に50%の遺伝子が子に受け継がれる
  • 父:本当に自分の子か分からない(見た目では確証できない)

この不確実性が、“親戚付き合い”の温度差に表れたりしますよね。


5. 群れの性比と規模

例えばライオンの群れ(ハーレム型)では──

  • 1頭のオスが多数のメスと繁殖
  • オスは希少=争いを避けた方が遺伝子を残しやすい

結果として:

✅ 近縁のオス同士は協力的に
❌ そうでないオスには攻撃的に

性比や群れの構成によって、
「親切」と「攻撃」の境界線が変わるのです。


📘 本章のまとめ:

“当たり前”の行動には、遺伝子の意図がある

  • 血縁を大事にする
  • 若い個体に未来を託す
  • 自分の得になりそうな相手に協力する
  • 母系を中心に信頼を築く
  • 群れの構成に応じて戦略を変える

これらはすべて、「自己の遺伝子を残す」ために最適化された行動。

🧬 生き物の行動は、驚くほど“合理的”で“戦略的”だったんです。


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