どうも、よだかです。
今回は「利己的な遺伝子」やさしく解説の第13回。
生物観を大きく揺るがすベストセラーの本書。
第13章のテーマは「遺伝子の長い腕」。
長かった旅もいよいよ最終章!
あなたは、遺伝子の持つ影響力を理解していますか?
本章では、遺伝子が及ぼす影響が細胞の外部にも及んでいるということをまとめていきます。
この本・本記事を読んで欲しい人
・利己的な遺伝子を読んでみたい
・生物の起源を知りたい
・進化の本質を理解したい
成功する遺伝子
成功する遺伝子とは、複製を残す確率が高い遺伝子のこと。
つまり、1つの胚(多細胞生物の発生初期の段階)の中にある他の全ての遺伝子から受ける影響を有利に働かせることのできる遺伝子のこと。
あらゆる環境の力を充分に活用できる存在と言い換えても良いですね。
うまく繁殖し、それと全く同じ遺伝子を未来の世代に送り渡すことができれば成功です。
遺伝子自身が意志を持つわけではありません。
しかし、生物は”繁殖”という目的に向かって行動するように運命付けられています。
結果的に、体の作りや行動への効果が繁殖に有利になるようにデザインされたのが生物です。
よだかのつぶやき
現代では、”繁殖”という定義すらも曖昧です。
単に子孫を残すことだけが繁殖ではありません。
自身の遺伝子を超えたところに、自分を残すことができる時代。
遺伝子の外部に存在する”ミーム”がその代表格とも言えます。
肉体という遺伝子の乗り物を超えたところに、自身の存在をつなぐカギを見出せる時代が来ているのかもしれませんね。
マイオティック・ドライヴ
遺伝子の中には、それ自身にとっては善であっても、他の遺伝子にとっては悪になり得る遺伝子が存在します。
これは、マイオティック・ドライヴ(減数分裂駆動)と呼ばれる現象で、肉体を自壊させてしまうなどの悪影響を及ぼします。
マイオティック・ドライヴを引き起こす因子を「分離歪曲因子」と呼びます。
例えば、マウスに見られる”t遺伝子”。
1匹のマウスが2つの”t遺伝子”を持っていると、その子供は死ぬかあるいは不妊になります。
いわゆる”致死遺伝子”です。
生物個体として、滅んでしまう形質が保存されているのはなぜなのでしょうか?
これは、生き物を一個体として見ている限り解決しない課題です。
もっと大きな視点で見るべきなのです。
肉体が遺伝子を保存しようとしているのではなく、遺伝子が肉体を乗り物にしているという視点で考えるべきです。
つまり、遺伝子はそこに刻まれた命令を忠実に実行しているだけに過ぎません。
延長された表現型
筆者が強調しているのは”延長された表現型”という言葉。
これは、遺伝子のもたらす影響が細胞の外部にまで及んでいることを示しています。
ある生物の行動が環境を作り替えたり、他の生物の行動や生活様式に作用するケースを見ていきましょう。
環境を作り替える
ビーバーは、ダムを作ります。
トビケラの幼虫は、巣を作ります。
それぞれ、非常に精巧に作られた建造物ですが、これがまさに環境そのものを作り変えるということです。
自分の遺伝子をつなぐために有利になるような行動様式。
そして、それを実現させてしまうような生き物の体の構造はもっと複雑です。
よだかのつぶやき
生き物は自分以上に複雑なものは作れないのかもしれません。
創造物が創造主を超えるということは非常にロマンのあることですが、進化の過程を振り返ると過去一度たりとも創造主を超える創造物が生まれたことはないのです。
創造とは、その定義において創造主の範疇を超えられない。
創造しようとしている限りは、限界を超えるものは生まれないのだと感じます。
創造主は、それ自体の構造が非常に複雑なのですね。
つまり、創造主が複雑になればなるほど、創造物の複雑性も高まっていくわけです。
優れたものを生み出そうとするなら、まずは、その主体が複雑になる必要があります。
寄生する
寄生するという戦略は、もっと複雑です。
なぜなら、そのスケールが非常に広範囲に渡るから。
まずは、具体的な例を見ていきましょう。
細胞外
カタツムリに寄生するある種の吸虫類は、カタツムリの殻を分厚くすることで知られています。
確かに殻の分厚いカタツムリは、外敵から身を守る可能性が高まります。
では、なぜ、その吸虫類がカタツムリの殻を分厚くするのでしょうか?
そもそも、寄生されないカタツムリが殻を分厚くしないのには理由があります。
それは、経済性の問題です。
他の活動に回すエネルギーが必要なため、殻を分厚くすることができないのです。
ということは、殻を分厚くした分、どこかからエネルギーを持ってきているということになります。
吸虫にとっては、カタツムリが繁殖できるかどうかは関係ありません。
ここから分かるのは、吸虫にとって有利に働く何らかの因子がたまたま同時にカタツムリの殻を分厚くしているということです。
吸虫の遺伝子は、宿主であるカタツムリのエネルギーバランスを崩して、自分の遺伝子をつなぐために利用している存在であると言えます。
実際、あらゆるタイプの寄生種は、宿主に対して驚くほど狡猾な影響を与えることが分かっています。
中には、宿主の生殖能力を奪ってしまうものすらいるのです。
細胞内
興味深いのは、その規制の形態が細胞内にまで及んだ場合です。
ここにおいては、寄生した相手にもきちんと生き延びてもらわなければ困ります。
そのため、寄生が深くなればなるほど、宿主に対して作用することを弱めていかなければなりません。
寄生の進度が深くなった状態は、もはや細胞内での共生と言えます。
一定のレベルまで寄生が進むと、宿主に作用するのを止める段階が来るというのは非常に興味深い考察ですね。
相手を徹底的に利用しようとした結果、同化してしまうというのは、なんだか皮肉めいています。
ボトルネック型の生活史
最後に解決しておきたいのは、”なぜ、生物は胚を残すことを目的としているのか?”ということです。
どんな生物も、その最終目標は、たった一種の単一細胞(精子または卵子)を残すこと。
ボトルネックとは、まさにこのように出口が狭くなってしまう状態を示します。
せっかく後天的に複雑な形質を獲得して、遺伝子の乗り物として強固な状態を手に入れたのに、肉体が死を迎えるとその遺伝子自体は、そこでその旅を終えてしまうことになります。
そもそも、不滅の肉体を構築してしまえば、それは遺伝子の永久的な乗り物として利用可能なはずなのに。
遺伝子を後世に繋ぐために、わざわざ単純化した単一細胞を残すという方法をとっているのは不思議ですよね。
しかし、これもきちんと説明できるのです。
その理由は3つ。
順番に見ていきましょう。
製図版に戻ることができるから
一度原点に戻ることで、生物は新たな形質を獲得することができるようになります。
これは、環境に適応するために最も優れた戦略の一つです。
不滅の肉体を獲得するよりも、変化できる可能性にかけた方が勝算があるということですね。
後天的に獲得した形質だけでは、あらゆる変化に対応できる補償はありません。
どんな形質を獲得しようとも、それはあくまで後付けの形質。
根本から変化することにはなりません。
変化に強くなるために、一度製図版に戻って、本当の意味での設計をし直す。
新たな形質を獲得しやすくするために、一度最も原始的なレベルまで戻った方が良いのです。
生き延びるために肉体的な死が設定されていると言っても良いのかもしれませんね。
秩序正しく時間の決まった周期があるから
発生過程が決まっているということは、生存戦略において有利に働きます。
肉体の成熟や、繁殖に相応しい時期が設定されていることで、闇雲には繁殖するよりもより確実に遺伝子を後世につなぐことができるからです。
加えて、特定の遺伝子のスイッチを特定の時期に入れたり切ったりできることも大切です。
これは、狙ってそうなったのではなく、進化の過程でたまたまそうなったという点が重要です。
私たちは事実を認識しているにすぎません。
細胞の均一性が保証されるから
これは突然変異への対抗戦略です。
極限まで単純化した遺伝子の継承方法であれば、突然変異した遺伝子から受けるリスクを抑えることができます。
また、同種内での差異を減らすことで、協力関係に落ち着きやすくなります。
好転的に獲得した形質の多くを継承してしまうと、数世代の後には全く別種の生き物になってしまう可能性もあります。
細胞の均一性を保証することで、大きな変化を抑えたまま、同じ形の複製を後世に繋ぐことができるのですね。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
遺伝子の利己性が我々の肉体を動かしている。
本書に書かれていることは非常に本質的な言葉ばかりで、あらゆる場面に応用が効きます。
ビジネス、人間関係、経済、哲学、、、。
今興味のある分野と繋げて考えてみるチャンスをたくさん提供してくれる素晴らしい本でした。
進化の本質を学ぶことは、そもそもの物事の起こりを考えることにもつながります。
本当に重要なのは、この本を読んで賢くなった気になってはいけないということ。
学んだことは実行に移してこそ。
この本をどのように人生に活かすのかということを忘れずにいたいものです。
これにて、利己的な遺伝子の解説を終わります。
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