こんにちは、よだかです。
今回は、田坂広志さんの「直観を磨く 深く考える七つの技法」を紹介します。
あなたは自分の思考力に自信はありますか?
「考えが浅い」「勘が悪い」
誰しもが一度は耳にしたことのあるこれらの言葉。
決して自分とは無関係ではないはず。
もっと深い思考ができるようになるにはどうしたら良いのでしょう?
「考える」ということは脳内で起こっているため、直接目で見ることができません。
しかし、「深く考えている」状態というのは確かに存在します。
本書は「深く考えている状態」と「そこへのたどり着き方」を解説してくれます。
直観を働かせているのは「賢明なもう1人の自分」です。
誰の中にも存在し、それを上手に引き出す方法というものがあるのです。
直観力を磨きたいのなら「賢明なもう1人の自分」との付き合い方を知ることが大切です。
著者の田代広志さんは、「思考する」ということを長年磨き続けてきた「思考のプロフェッショナル」!
著者プロフィール
著者の田坂 広志さんは、日本の技術者、経営学者。工学博士の学位を持っています。1974年、東京大学卒業。1981年、同大学院終了。工学博士の学位を持つ。民間企業を経て、1987年米国シンクタンク・バテル記念研究所の客員研究員を務める。その後も、国内外問わず幅広い活動に専念。現在、21世紀の経営者やリーダーに求められる「変革の知性」を学ぶ場、「田坂塾」の塾長も勤めています。まさに、現代の知性の在り方をリードしていく第一人者と言える方です。
本書の中から特に面白かった部分を
「深く考える七つの思考法」
「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」
「賢明なもう1人の自分を引き出す七つの方法」
「賢明なもう1人の自分と対話する七つの方法」
の4つに分けてまとめました。
それでは早速紹介していきましょう!
深く考える七つの思考法
あなたは、自分の思考方法についてどれほど自覚的でしょうか?
そもそも考えるということ自体を客観的に捉えられている人の方が少ないかもしれませんね。
でも、安心してください!
「深く考えること」は技術です。
その方法を知ることで誰でも身につけることができるのです。
物事を深く考えるためには、七つの思考法があることを知っておきましょう。
①循環構造の全体を見る
問題が発生した時、多くの人はその部分だけを切り取って判断してしまいます。
しかし、現実は「Aという問題を解決するためにBという原因がある。だからBを取り除こう」というような単純なことではないのです。
物事は巡り巡って繋がっている構造をとることがほとんどです。
つまり、問題が起こっているときには、なんらかの形で悪循環が生み出されているのです。
まずは、循環構造を把握するように努めましょう。
循環構造を把握したら、問題解決のために
①循環構造の全体に働きかけ
②悪循環を断ち切るツボを見出し、そこに働きかけるようにしましょう。
②より高い視座で考える
二つの対立した考えを統合して、より高い視座で考えるようにしましょう。
「どちらが正しいのか」を決めるのではなく、「どちらの正しさも受け入れる」ように努めることでより高い視座からの発想を得ることができます。
論理思考を重んじると二項対立にはまり込んでしまう可能性があります。
充分に注意を払うようにしましょう。
③解決すべき課題を考える
解決の方法ばかりに気を取られると、視野が狭まります。
本来、解決すべき課題は何なのか?
問題を生み出す根本にあるものは何なのか?
目の前の出来事の背景に意識を向けるように心がけましょう。
解決のための本当の鍵は「人間心理の機微」にあることも多いのです。
④専門分野を結びつけて考える
一つの分野に特化しすぎると、視野が狭くなりがちです。
二つ以上の専門分野に渡って水平的に物事を考えられると、思考は深まっていきます。
この力を磨くために意識すべきことは3点あります。
1、常に一つの専門分野では答えられない「広く大きな問い」を持つ
2、答えを求めて読書をする
3、分かりやすい言葉に言い換える
⑤体験から掴んだ知恵で考える
私たちは、思考するとき、自らの体験によって身につけた言語化できない知性(体験知)と、本や雑誌、新聞やウェブ記事などから得た言語化された知性(文献知)を働かせています。
「我々は、言葉で表せる以上のことを知っている」
言葉は世界の一部を切り取っているだけに過ぎません。
文献知によって得られた思考だけでは浅い思考になってしまうので、自分自身の体験知も含めて思考することが大切です。
「体験知」を用いることを習慣したいのなら、毎日時間を取って、「反省日誌」を書くと良いでしょう。
これに加えて、行うべきことは3つ。
・現在の経験から反省点を探す
・過去の経験を棚卸しして整理する
・未来の経験には目的意識を持って臨む
過去・未来・現在に向ける思考を区別すると、豊かな「体験知」を身につけることができます。
⑥他者視点に切り替えて考える
相手の立場が想像できない理由は二つあります。
一つ目は、自身のエゴが非常に強いからです。
そもそも、エゴは消せません。
現れた自分を、否定も肯定もせず、ただ静かに見つめるように努めましょう。
二つ目は、経験不足です。
他人と同様の経験がなければ、視点・立場・気持ちを想像することはできません。
ですから、自分が苦労と向き合った時にその経験を「他人の視点」を学ぶための好機として捉えることが重要なのです。
自分の身に起こった経験を、今後他者の身に起こりうることとして考えてみましょう。
客観的に考えることに繋がり、その瞬間の苦しみを少し和らげることにも繋がります。
【疑いながら、理解する!?】他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ【ブレイディみかこ】
⑦「賢明なもう1人の自分」と対話しながら考える
誰しも、自分の中に「懸命なもう1人の自分」がいます。
懸命なもう1人の自分は、論理的思考を超えた「鋭い直感力」とデータベースを超えた「膨大な記憶力」を持っています。
私たちは、自身の潜在能力を信じきれていないが故に、「懸命なもう1人の自分」が現れるのを自ら邪魔しているのです。
世で活躍する天才たちのように、自身の潜在能力を発揮するためには、どうしたらよいのでしょうか?
ゼロ・ポイント・フィールド仮説
ここからは、天才の思考と凡人の思考において、決定的に違う点を探っていきましょう。
筆者は、その答えとして「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を挙げています。
これは「この宇宙のどこかに全ての情報が記録された場所がある」という説です。
何らかの方法でここにアクセスできれば、あらゆる知恵やアイデアを無限に引き出すことができるのではないかと考えているのです。
天才たちの思考には、あることが共通しています。
それは、自分の生み出した発想やアイデアを自分が生み出したと思わず、「どこかから降りてきた」と思っているということです。
「大いなる何かをつながる感覚」「大いなる何かに導かれる感覚」という感覚は、ある種の「全能感」をもたらしてくれます。
この感覚が自分の可能性に蓋をせず、自己限定をしない意識の正体です。
「無心の状態」を再現することによって、私たちも「ゼロ・ポイント・フィールド」にアクセスできるようになるのです。
ここで重要になってくるのが、「賢明なもう1人の自分」です。
若干スピリチュアルな内容になってきましたが、本書では科学的な立場から論が展開されているので、気になる方はぜひ本書を手に取ってみて下さい。
「賢明なもう1人の自分」を引き出す七つの方法
ここからは「賢明なもう1人の自分」を引き出す七つの方法を紹介します。
一つずつ試しながら、自分だけの組み合わせを探し出すのも楽しいかもしれません。
①呼吸を整え、深い呼吸を行う
「呼吸の深さは思考の深さ」
ゆっくりとした穏やかなペースの呼吸は、身体感覚を落ち着けて、深い思考を促してくれます。
併せて、自分に適した自己暗示の言葉=「祈念の言葉」を用いることも有効です。
私のように「よし、やるぞ!」というシンプルなものから、著者のように「大いなる叡智、我が内に流れ入る」というものまであります。様々に試す中で、自分に合った「祈念の言葉」を見つけてみて下さい。
②音楽の力を活用する
耳に入ってくる音の影響力は絶大です。
単調なリズムを繰り返す音楽は、私たちの心を軽いトランス状態に導いてくれます。
また、環境音や自然の音を活用するのも効果的です。
私も色々と試してきましたが、最近のお気に入りは自然環境の音です。
活用している音源のリンクを貼っておきます。
③群衆の中の孤独に身を置く
他者のいる公共スペースで過ごす時間を作りましょう。
人の声や雑音に溢れるカフェや喫茶店は「密やかな安心感」と「心地よい孤独感」を同時に与えてくれる場所です。
電車の中などでも良いでしょう。
大切なのは、自分と無関係な他者とスペースと共有しているという状況です。
④自然に触れる
自然には、偉大な浄化力があります。
定期的に自然の多い場所に旅行に出かけたり、近くの公園や海岸を散歩してみると良いでしょう。
より効果を高めるために、木々の一本一本をじっくりと眺めたり、海岸に打ち寄せられたものを眺めてみたりしましょう。
心を込めて向き合うポイントを自分なりに増やしていくことが大切です。
⑤考えるための散策をする
街中や雑踏の散策、自然の中の散策をします。
今やっていることから距離をおいて、一旦思考を自由にしてあげましょう。
②の音楽と組み合わせることで、相乗効果を期待できます!
⑥瞑想が自然に起こるのを待つ
瞑想をしているときの心構えです。
瞑想についての詳しい方法は私自身の体験談とともに別記事にまとめてあります。
【心も身体も万全に整う!】1年間瞑想を続けた私の振り返り【継続のポイント・オススメ本も紹介】
⑦全てを託するという心境で祈る
「大いなる何か」に目の前の問題の今後の展開も、解決への道も、全てを託して祈る。
「要求の祈り」をしてはいけません。
「要求」という心理そのものがエゴを呼び覚ましてしまうからです。
「懸命なもう1人の自分」と対話する方法
最後に、自身と対話する七つの方法をまとめます。
①毎日、日記を書く
自分に起こった出来事やそれをどう感じたかなどを日記に書きます。
頭の中にあることを書き出す過程で、思考が整理され、後から見直すこともできます。
毎日続けることで、考えていることを整理し見直そうという思考習慣が身につきます。
②問いを投げかける
「問い」は思考の出発点です。
思考の起点となる「問い」をたくさんストックしておきましょう。
【思考を回すにはまず◯◯!】観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか【佐渡島 庸平】
③問いを忘れる
「答えを知りたい!」という欲求が強すぎると、直感力は上手く働きません。
思考の材料を充分に準備し、徹底的に考え抜いた後は、一旦全て手放してしまいましょう!
賢明なもう1人の自分は、「問い」を忘れたとき、考え始めるのです。
この間に、自然に触れたり、散策に出たりすると良いですね。
④意図的に追い詰める
「賢明なもう1人の自分」は大きなプレッシャーを楽しむ傾向があります。
締め切り、制限、プレッシャーを意図的に与えてそれを楽しむ自分を認識することで、本来ここまでと感じていた壁を突破することに繋がります。
時には、自らの退路を断ち、自らを追い詰めることで「賢明なもう1人の自分」にその力を発揮してもらうのです。
⑤禅問答をする
「賢明なもう1人の自分」は難しい問題を好む傾向があります。
答えのない問いを持ち続けることで、自身の思考を回す練習です。
論理的に矛盾した対極の言葉を結びつけて考えてみましょう。
例えば、「未来の記憶」「無用の用」「無計画の計画」などが挙げられます。
この言葉には深い意味があるはずだという動機付けをすることで、「賢明なもう1人の自分」が思考を始めます。
⑥格言の解釈を付け足す
世にあふれる様々な格言。
これらに自分なりの解釈や言葉を付け足してみましょう。
これは、文献知と体験知を組み合わせる練習として最適です。
自身のお気に入りの格言に一言プラスするなら、どんな言葉が相応しいのか?
格言を受け取るだけで終わらせないコツですね!
⑦エッセイから思考の転換を読み取る
著者の思考を追いかけたいときに、エッセイを読むというのは大変有益な方法です。
ここで一工夫して、思考の転換を追いかけて読むということを意識してみましょう。
まず、「始まりの視点」を掴み、その視点がどのように移っていくのかに着目しながら読んでいきます。
視点が深まったポイントを探ることで、読者自身も深い思考をする追体験ができます。
よだか流・深堀り
1、曖昧さの中にこそ、知性がある
ゼロ・ポイント・フィールド仮説という部分が非常に興味深いと感じました。スピリチュアルという言葉に怪しさを感じるのは、その分野の勉強不足が1番の原因なのだ思います。何事も勉強していないことは、不安や恐怖の対象になってしまいます。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という諺にもあるように、正体が分かってしまえば笑い話になるようなことでも、分からないうちは不安や恐怖を喚び起こしてしまうのです。極端な考え方に囚われず、柔軟な思考を回り続けていくために必要なのは、全てを明快に解き明かすことではなく、曖昧なものを曖昧ままに認識するという事なのでしょう。無知であることは恐ろしいです。新しく知ったからこそ、新しい捉え方ができるようになったり、これまでの考え方を補強してもらえたりするのです。「正体を知りたい」「本質を突き詰めたい」という欲求は、人にとって自然なことなのかもしれませんが、答えが分からないからこそ考え続けるエネルギーが湧いてくるというのもまた事実です。「大きな問いを持ち続ける」というのは、自身の思考を深め続ける最善の方法の一つであるように感じます。
「わからないから、わかりたい」「知らないから、知りたい」
「技法は知っているけれども、それに囚われ過ぎない」
「思考する」ために「思考するというこだわりを手放す」
「分かる」と「分かった」に明確な線引きをするという状態を手放せるようになった時、初めて、物事を本質的に考えることができたと言えるのです。
まずは、物事をグラデーション(濃淡)やレイヤー(層)を意識して捉えるクセを磨いていきたいものです。
2、自分のコンセプトは明確にする
本質的なことは、シンプルで分かりやすくできています。とはいえ、本質的な表現は抽象度が高く、表現するのも理解するのも難しいです。何より、自分自身にきちんと説明してあげることができません。
「敵は我にあり」
分かった気になっている状態が最も怖いのです。
「賢明なもう1人の自分」を働かせるきっかけを作るのは、現在顕現している「表層的で、理解力の乏しい自分」です。本質にあたる部分を機能させる最初の働き手は、「物分かりの悪い自分」です。とっかかりのハードルを如何に下げられるだろうかということを考えましょう。自分自身に与えるコンセプトはいつも明確な方が良いのです。コンセプトを明確にしておくことで、「物分かりの悪い自分」の迷いが減って、思考を回したり、行動に移すまでのハードルがぐんと下がります。すんなりと行動できるようになってきたら、徐々にハードルを上げていけば良いのです。段々と抽象的なコンセプトを示すようにしていきましょう。少しずつハードルを上げていくことで、「表層的で、理解力の乏しい自分」を「賢明なもう1人の自分」に近づけていくのです。
自身のコンセプトは、誰が見ても理解できるレベルの明確なものにしましょう。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
紹介したのはごく一部で、実践的な技術や深く読み込める部分がたくさんあります。
新書の形式なので、1〜2時間ほどあれば、内容にざっと目を通すこともできます。
本書を読むということ自体が、直観を磨く営みです。
紹介されている技法を丁寧に一つずつ積み上げていくことで、思考に磨きがかかること間違いなしの1冊!
ぜひ手に取ってみてください!