どうも、よだかです。
あなたは自分の思考そのものをしっかりと考えてみたことはありますか?
賢い人の思考の仕組みがどうなっているのか、覗いてみたくないですか?
今回紹介するのは「エマニュエル・トッドの思考地図」
フランス出身の歴史家である彼の思考方法が整理された大変有益な本。
早速内容をまとめていきます。
この記事・本を読んで欲しい人
・物事を捉える視点を増やしたい
・そもそも「思考」というプロセスを明確にしたい
・歴史という視点から物事を捉えられるようになりたい
・エマニュエル・トッドが好き
エマニュエル・トッドってどんな人?
フランス出身の歴史学者。
歴史家としてのキャリアは長く、その圧倒的な知識量を視野の広さや深さから、これまでも世界情勢のいく先を度々言い当てていて「預言者」と称されることもしばしば。
親日家としても知られていて、日本に関する発言や寄稿なども多い。
文藝春秋に寄せた原稿をまとめたものが「老人支配国家 日本の危機」として出版されている。
↓本書の紹介とまとめはこちらから
【突破口は”移民の受け入れ”】老人支配国家日本の危機【エマニュエル・トッド】
①インプット:情報を集めて蓄える
まず、トッド氏のインプットの前提は「学びそのものが楽しい」ということ。
なんと仕事の95%は読書です。
残りの5%は執筆。
これだけでも、歴史家・研究者としての本質が感じられますね。
好奇心からただただ調べる。
そこには余計な思考は一切ない。
何のためとか考えない。
そして「必要な情報が集まれば、あとは勝手に考え始める」とのこと。
この考え方は、決して大袈裟なものではありません。
極限まで基礎基本に忠実な考え方です。
私たちもアイデアを閃かなかったり、思考が停止してしまう時は、情報が足りないだけなのです。
知的生産に携わるのならば、必要な情報を集めて考えられる土台を整えることを常に意識しておきたいことです。
仕事以外にも「市民としての読書」があります。
物事に明確な問題意識を持ち、それについての知識を蓄える態度で臨む読書です。
これは世の中のことに関心を持ち、それを確かめていく作業ですね。
また、参考や脚注は非常に役立つとも述べています。
良い本に出会った時に、その本を書いた人のルーツを知ることができるのが参考や脚注です。
本に書いてあることだけでなく、その源泉となっている部分に迫るのは、まさに一次情報を取りに行く営みです。
できるだけ濃い情報にあたることができますね。
このように読書をしていると「カニ歩きの読書」になります。
自分の柱は持ちつつも、そこから外れた読書をすることで、アイデアを出す準備をするのです。
これは、人にあって考えを交わす中で閃きが生まれることにも通ずると感じました。
トッド氏の驚くべき強みとして「何日も同じことを考え続けることができる」ということが挙げられます。
これは養老孟司さんも同じようなことを言っていました。
学者気質の方は、自分の中に生じた考えをずっと保ち続けることができるのです。
これは見方を変えれば、誰もが学者になれるということです。
なぜなら、自分が夢中になって考え続けられることを誰もが持っているからです。
大切なのは、それが人の役にたつかどうかやお金になるかどうかを一切度外視すること。
誰もが、何かの道の専門家になれるのです。
この項の最後で伝えたいのは「結論づける勇気を持つこと」。
どれだけ情報が集まって思考が働いたとしても、最後にそれに決着をつけるのは自分自身なのです。
ましてや、歴史家として世間の発信する立場であれば、一定数の人々から批判をされることは当たり前。
「シャルリとは誰か?」を世に出した時の経験を語り、そのことの辛さを知っているトッド氏ならではの言葉ですね。
②着想:発見をする
思考の本質は「発見」である
思考を回すためには、データの蓄積が絶対条件です。
蓄積したデータを意識してはいけません。
考えなくても済む「無意識」のレベルまで落とし込む必要があります。
トッド氏の考える思考を妨げる条件は2つ。
①データを無意識のレベルまで落とし込めていない
データという姿そのものに思考がとらわれていて、そのデータの本質自体を感じ取れていない状態。
考えなくても良い状態に落とし込めていない時は、あえてそれらを一旦忘れてしまうことです。
②思考の活性化を遮る枠がある
思考のフレームワークそのものに問題がある場合がこれにあたります。
例えば、フランス人として日本を見るのか、日本人として日本を見るのか。
これだけでも物事の捉え方は全く変わってくるでしょう。
トッド氏が述べているのは、そう言った無意識の思考の枠組みがあるため、それを自覚できないうちは新たな着想は得られないということです。
海外旅行に至った際のエピソードが紹介されていて、その時に自分の思考のフレームを知ったとのこと。
自分を枠組みの外に置く方法の一つとして、旅行は非常に有効です。
あなたも旅先では、新しいことに気付いたり、今まで感じていたことが全く変わってしまったことはありませんか?
場所を時間を変えることは、新たな着想を得るきっかけになるのです。
③検証:発見したことを確かめる
思考の検証にはフレームワークが必要です。
物事に姿を確かめる方法のことですね。
トッド氏の場合は、それが「人口統計学」なのです。
仮説を形にするには
①整理して
②分析する
というステップを通過します。
つまり、検証とは「直感を言葉にする作業」なのです。
トッド氏は「いい研究とは自分がワクワクしているかどうかだ」と言います。
なんでも良いので自分自身の思考のフレームワークを持つこと。
それが数学でも科学でも文学でも良いでしょう。
そしてそのフレームワークを使っているということを意識すること。
思考の土台を意識するという点では、養老孟司さんの考え方とも通ずる部分がありますね。
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④分析・洞察:文化の外側から見る
ここまで来たらいよいよ仕上げです。
現実を直視するには、「自分の文化の外側から見る」とことが欠かせません。
自分の知性の所属を定めてはいけません。
自分が常にアウトサイダーであるような仕組みづくりをしましょう。
トッド氏はフランス人ですが、文書は基本的に英語で読むようにしているそうです。
言語が異なると思考のフレームワークが異なってくるので、自然と思考も文化の外に出ることになります。
これには大変驚きました。
読む手段として外国語を学ぶことは有益だということはうっすらと感じていたことではありますが、ここに来てその根拠を感じさせてもらえたような気分になりました。
確かに、英語を読んでいる私の思考は日本人特有の思考からは離れているような感覚があります。
(私は浪人時代に英語をがっつり勉強したのこともあって、それ以降もちょくちょく英語で文を読む機会を設けているので、今でもそこそこ英語が読めるのです)
また、それ以外にもアウトサイダーたる方法が紹介されています。
①海外旅行に行く
②古典・SFを読む
③既に死んでしまった人の本を読む
④鬱々とした気分になっている時こそ頑張る(トッド氏は恋愛面で危機的な状況にある時ほど、研究に打ち込むそうです)
いつもの自分と違う自分になれるきっかけを与えてくれるものを分析することが大切ですね。
また、自分自身が物事の渦中にいないようにすることも心がけたいと述べています。
体験そのものから自分を遠ざける
トッド氏の父はジャーナリストであり「自分が現場に赴くことで思考が現場に引っ張られてしまう」ということを言っていたそうです。
ここに筆者の原体験を感じます。
ある程度離れた場所にいないと、身体性に思考が引っ張られてしまうのは、人の性質というほかありません。
環境に適応しようというごく自然な振る舞いが、アウトサイダーたる自身を薄めてしまうのです。
現実を直視したいのなら、環境にどっぷりと浸からない生活習慣を保つことが重要です。
長期的なスパンで物事を見る
20〜30年というスパンで物事を見るようにすると、目の前のことを大きな流れの中で捉えることができるようになります。
これは私も大きく賛同できる部分です。
歴史を学ぶと、自然と長期的な視点で物事を考えられるようになります。
歴史を学ぶメリットは、この点に集約されていると言っても良いでしょう。
トッド氏は「歴史は信頼できる」と述べています。
なぜなら、歴史は「既に完了している」ことだからです。
歴史そのものが過去のデータの蓄積そのものだと言えます。
そこにどんな解釈をつけるにせよ、歴史という事実自体は揺るぎない現実です。
⑤予測:芸術的な学者になる
最後の仕上げです。
この部分が最も難しく、そして最も面白い!
予測に至るには以下の3ステップを通過します。
①現実に服従する
徹底した経験主義で事実を見ます。
定量的なデータだけを信じて、感情は消す。
ただただ現実を直視します
②対比する
次に自分自身の経験と過去の歴史とを組み合わせて①で得たことと比べてみます。
ここで、自分の主観をフル活用するわけですね。
全くの対極にある自分を2人作り出して、戦わせるようなイメージですね。
③予測する
最後に予測モデルを作ります。
リスクをとって、思い切る覚悟が必要です。
トッド氏はこの営みを「芸術家に近い」と分析しています。
芸術家の行為の一つ一つは、実は絶え間ない修練の先に行き着いた究極の合理性の集合です。
一つ一つが非常に合理的であるが故に、その集積が非常に高い価値を生むのは、「芸術」も「研究」も一緒です。
この考察は非常に面白いです。
一見対極にあるように見えるものも、実は共通点があるという発見になりました!
⑥おまけ:トッド式アウトプットと学者としての矜持
アウトプット方法
・話す前に話すことを想像する
・書きながら考えない→形になってから書く
(書くという行為はしっかりと構築された思考モデルを放出するということである)
・ディクテーション
(自分が喋ったことを第3者に文字に書き起こしてもらう)
・思考の章立てを用意しておいて、チェックリストとして使う
トッド氏の基本スタンス
・反感、思想、同調圧力に屈しない
・学者同士は知性で戦うべきあり、感情で戦ってはいけない
・人生や世界は本質的に不完全
・自身の中には複数の自己が存在する
・人は理性を忘れるようにプログラムされている
・厳しい批判を浴びるのは特権(本質を捉えた証拠)
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
トッド氏の著作の中では比較的読みやすかった本書。
現代の賢者の思考を覗き見できる貴重な一冊でした。
本記事があなたの思考を磨くきっかけになれば嬉しいです。
思考を磨く以上に、トッド氏の思考の根幹を知る手がかりになります!
おすすめの本ですので、ぜひ手に取ってみてください。
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