どうも、よだかです。
今回は「利己的な遺伝子」やさしく解説の第12回。
生物観を大きく揺るがすベストセラーの本書。
第12章のテーマは「気のいい奴が一番になる」。
遺伝子を構成につなぐために、個体の取り得る最も最適な戦略は「やられたらやり返す」こと。
普段は温厚で協力的に振る舞い、相手が裏切った時だけ1回限りの報復をするというものです。
「そんな単純なことで良いのか?」と疑問を持つ方もいるでしょうが、これは数々の実験によって証明されている事実なのです。
本章で、気のいい奴として振る舞うことが遺伝子をつなぐ上でどのように適用されているのかを紐解いていきましょう。
この本・本記事を読んで欲しい人
・利己的な遺伝子を読んでみたい
・生物の起源を知りたい
・進化の本質を理解したい
ゲーム:囚人のジレンマ
ここでは、アメリカの政治学者ロバート・アクセルロッドが行った「囚人のジレンマ」というゲームが引用されます。
囚人のジレンマ
・「胴元」が1名、プレイヤーが2名
・プレイヤーは、「協力」と「背信(裏切り)」という2枚のカードを持っている
・プレイヤーは「協力」か「背信(裏切り)」のどちらかのカードを出し、結果に応じて規定の報酬を得る
結果1:共に「協力」を出した場合
→胴元は両者に300ドルずつ支払う
結果2:片方が「協力」、もう片方が「背信」を出した場合
→胴元は「背信」を出したプレイヤーに500ドル支払い、「協力」を出したプレイヤーから100ドルを徴収する
結果3:共に「背信」を出した場合
→胴元は両者から10ドルを徴収する
アクセルロッドは、このゲームを何度も繰り返して最終的に最も報酬の多くなる戦略を考察しました。
様々な分野の専門家に戦略を募集し、集まった数々の戦略の中から最も多くの報酬を獲得する戦略を検証したのです。
気のいい奴はボロ負けしない
その結果、最も良い成績を上げたのは「普段は”協力”を出すが、裏切られた次の回だけは”背信”を出す」という単純なものだったのです!
この戦略を「やられたらやり返す」戦略と呼びます。
他にもさまざまな複雑な戦略が考案されましたが、結局のところ最終的には「やられたらやり返す」戦略が最も良い結果を出しました。
この実験から示されるのは、生物の自然淘汰においても同じことが当てはまるということです。
気のいい奴は、初めの1回は騙されて痛い目を見てしまうかもしれませんが、基本的には自分から相手を裏切るような真似はしないので、お互いに良い結果を求める相手からも良い待遇を受けるチャンスを見逃すことはありません。
様々な相手が存在する環境の中で自分の戦略を複雑化せず、一旦は相手を信頼するというスタンスを示すことで、自分の取り得る利益を最大化することができるのです。
よだかのつぶやき
注意しておきたいのは、常に相手を搾取しようとする裏切り者で溢れかえる環境では、「やられたらやり返す」戦略が最強にはなり得ないということ。
環境の多様性が保証されている中でこそ、この戦略の強みが生きるのです。
複雑化する自然環境が前提となっていることは、頭に入れておきたいことですね。
ビジネスの黎明期においては、詐欺師が大量に発生するという点もこれに似ていますね。
発展途上の環境には、搾取する側が一時的に有利になるということを覚えておきましょう。
胴元をコケにし続けろ!
ここで、意識しておくべきことはそもそも”胴元”をやっつけようという発想が大切だということ。
ルールを作った”胴元”から搾取し続けることも可能なのです。
プレイヤーが結託して、お互いに”協力”のカードを出し続ければ、”胴元”から一方的に利益を得続けることができます。
「囚人のジレンマ」を利用している”胴元”の存在に気付けば、今行っているゲームのルールを逆に利用して、胴元への攻撃をすることができるようになります。
よだかのつぶやき
遺伝子のプールから抜け出して、大きく引いた視点を持つことで、そもそも我々が争っているステージの大きさを客観的に眺めて、より良い行動ができるようになるのです。
誰かと争っている自分の行動が、実はもっと大きな”胴元”の手のひらの上にあるのではないかということを意識してみると、自分の取り得る戦略を見直すことにも繋がりますね。
競争の中に巻き込まれているかもしれないと感じたら、一度立ち止まって、自分たちの行うゲームの損失が誰の利益になるのかということを考えてみて身良いかもしれませんね。
結局のところ、敗者の損は誰かの利益になっているのですから。
ゲームが続くことが前提
この理論は、ゲームが続くことが前提です。
いつゲームが終わるのかということをプレイヤーに悟られてはいけません。
なぜなら、ゲームの収束に向けてプレイヤーの取り得る戦略は変化するからです。
「やられたらやり返す」戦略は、長期的に利用してこそその真価を発揮します。
ビジネスや人間関係にそのまま当てはめて一時的に利用するには、やや無理がありますが、それでも一定の信頼感はあります。
「遺伝子をつなぐゲーム」は、いつ終わるとも知れぬ継続性があります。
遺伝子プールの中で生まれた私たち生存機械は、その戦略の到達点なのかもしれません。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
本章では、アクセルロッドの「囚人のジレンマ」を元にして、最適な生存戦略における振る舞いについてまとめました。
様々な戦略を持つ個体が存在する環境では「やられたらやり返す」戦略が最も良い成績を上げることが伝わったかと思います。
また、環境が出来上がりつつある中では、搾取する戦略が一時的に良い成績を上げることも指摘しました。
どんな戦略が台頭しているかをみることで、その環境の発達段階を知ることにも繋がりますね。
次回、第13章のテーマは「遺伝子の長い腕」。
「遺伝子は細胞を超えてその影響力を発揮する」ということをまとめていきます。
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