どうも、よだかです。
文化の裏側にある差別主義について考えたことはありますか?
今回紹介するのは、エマニュエル・トッドの「シャルリとは誰か?人種差別と没落する西洋」です。
本書のメインテーマは「宗教的空白と格差の課題が外国人恐怖症を生む」というもの。
フランス出身の歴史学者エマニュエル・トッド氏が語るフランスの現代と未来。
テロリズムとそれに対する世間の抗議運動を国民性に鋭く切り込んで考察した本書は、当時フランス内外問わず大きな話題となりました。
トッド氏は容赦のない批判に晒され「あれは非常に辛い出来事だった」と述べています。
しかし、だからこそ歴史という観点から事実を見るという提案は、非常に価値が高いとも言えます。
日本の未来予測にも通ずる内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
この本を読んでほしい人
・フランスのたどる未来について知りたい
・歴史学者の視点で物事を考えられるようになりたい
・異文化との関わり方について知りたい
エマニュエル・トッドってどんな人?
フランス出身の歴史学者。
歴史家としてのキャリアは長く、その圧倒的な知識量を視野の広さや深さから、これまでも世界情勢のいく先を度々言い当てていて「預言者」と称されることもしばしば。
親日家としても知られていて、日本に関する発言や寄稿なども多い。
文藝春秋に寄せた原稿をまとめたものが「老人支配国家 日本の危機」として出版されている。
↓本書の紹介とまとめはこちらから
【突破口は”移民の受け入れ”】老人支配国家日本の危機【エマニュエル・トッド】
シャルリエブド襲撃事件
2015年1月、パリの社会風刺新聞「シャルリ・エブド社」にイスラム過激派テロリストが乱入し、12人を殺害した事件。
テロリズムへの抗議運動が起こり、表現・報道の自由について様々な議論がなされた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/シャルリー・エブド襲撃事件
BBCのニュースサイト「2020年に書かれた記事」→シャルリエブド襲撃事件「被告人14人に有罪判決」
フランスとはどんな国?
過去、フランスは共和主義の国でした。
様々なルーツを持つ民族が、それぞれの領分を尊重しあって共同体を形成していました。
その文化的多様性を維持しながらも、国の危機に至った時には全員が団結して立ち上がる国でした。
その点がヨーロッパの国々を魅了していました。
ところが現在は、ネオ共和主義の国になってしまっているのです。
フランス周縁部の地域はカトリシズムを取り戻し、世俗主義的な中央部は機能不全に陥っています。
そのため、中間層を中心に「イスラム恐怖症」を発症するに至ったのです。
これは実は、ユーロの危機などが原因なのですが、そのためのスケープゴートとして選ばれたのが「イスラム教」だったのです。
今後、フランスはこの問題を解決するために、どうすれば良いのでしょうか?
今後の選択肢A:イスラム教との対決
この道を選ぶとフランスの未来は100%閉ざされます。
なぜなら、フランスにとってイスラム教とは切り離せない存在だからです。
さらに、政府が強硬策を採れば、若者はイスラムに自己の精神性の居場所を求めて国を去っていくでしょう。
本来、問題の原因はイスラムではないのです。
ここで起こっているのは、問題のすり替えです。
個人的なナルシシズムが、集団的ナルシシズムになってしまっているのが現代のフランスの抱える問題です。
危機に陥っている西洋世界の特徴として、自身の内部の問題を外部環境のせいにしているということが見られます。
今後の選択肢B:共和国への回帰
フランスが生き残るには、イスラム教徒の折り合いをつけていくという方法を取るしかありません。
そのために急務となってくることが3つあります。
①冒涜者の身体的安全を保障する
シャルリエブド襲撃に対する報復を招いたのは、暴力性を押し止められなかった政府にも原因があります。
社会において、報復が起こらないシステムを構築する必要があります。
②表現の自由を保護する
表現者が排斥されないようにしなければいけません。これもまた、襲撃と報復の連鎖を止める手段です。
③同化を導く
混合結婚を広く認めることで、宗教的懐疑論と自由思想の許容を進めるようにします。
そして、男女の地位の平等を保障する制度も整えていきます。
つまり、フランス文化の中心にイスラム教を受け入れていくということです。
これには大変長い時間がかかります。
人の意識に刷り込まれたことはそう簡単に変わりませんし、何より政権を握っている高齢者層が既得権益を手放さないでしょうから。
今後何年かは、事態が好転することはないでしょう。
それどころか、悪化していくことが予測されます。
大切なのは、政権を握る世代が変わるタイミングで政策を変えていくこと。
そのための意識転換の準備を今からしていく必要があるのです。
フランス人には、良い意味で”きまじめさ”が欠けています。
細かいところに拘らず、たいていのことは曖昧なまま受け入れることができます。
それは、過去、フランスが真の意味で共和校だったことがしっかりと証明してくれているのです。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
この本を読んで、日本の現状も同じようなことをなぞっていると感じました。
日本において、移民へ理解の不足や他宗教への誤解などが多くの場面で見られます。
なんだかよく分からないという理由で、特定のコミュニティを遠ざけたり、自分で調べることもなくメディアの示す情報だけで、物事の善悪を判断しがちです。
自身の持つ思考のフレームワークを意識して、自身の国の現状をとらえられるようでありたいです。
また、自国の文化のルーツをしっかり学んで、切り離せないものを知ることも大切なのだと思いました。
本書は非常に重厚で、この記事にまとめたのは本書の内容のほんの一部です。
ぜひ一度手に取って、歴史を紐解くトッド氏の思考に触れてみてください。
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