こんにちは、よだかです。
鈴木祐さんの「無(最高の状態)」を読み終えたので、内容・感想をまとめていきます。
不安や心配事の正体を考察し、それらとの付き合い方を述べる本。
この本の魅力は、具体的なメソッドが豊富に紹介されている点です。
よくある精神修養系の本とは一線を画す内容で、読んだその日から理屈を理解して、すぐに取り組むことができます。
「苦」の正体は「自己」であるという部分が哲学にも通じていて、その部分を特に興味深く読むことができました。
この本を読むと、、、
①自己への執着が如何に生産性を下げるのかを理解することができます。
②一般的に「根性論」とレッテルを貼られるような意見を論理的に説明できるようにもなります。
③自分をコントロールする様々なテクニックとその根幹の部分や理論を学ぶことができます。
感情を理性的に処理できるようになるので、今日から冴え渡る思考を磨き抜いていきたい方は必読です!
自分を知ることが出発点
原始の時代から命を繋いできた私たちの本能は、自然界で生き延びるために「危険なことは強く認識し、嬉しいことはすぐに忘れる」という戦略を獲得してきました。常に外敵から身を守る必要がある環境下では、やむを得ない選択です。うかうかしていたら死んでしまうような環境下では、順当な進化と言えるでしょう。ネガティブな環境に適応してきた生き残りが私たちなのです。
そのため、私たちの認識には大きく分けて以下の2つの特徴があります。
①悪いことは強烈に認識し忘れにくい
②良いことはすぐに忘れてしまう
要するに「調子を落とすのは簡単なのに、上げるのは難しい」のです。
私たちにできるのは「ネガティブなことには反応しやすいことを受け入れること」と「自分の気持ちを高めてくれることには継続して触れ続けなければならないということ」です。もう遺伝子レベルでそのように設計されているので、この仕組みには無理矢理逆らわない方が良いです。
絶好調を維持するのには、それ相応の努力が必要です。ですから、自分のことを深く知って調子を上げてくれるものをできるだけたくさん身の回りに配置して、悪いストレスをもたらすものからはできる限り距離を置く工夫が必要なのです。
そもそも「苦しみ」とは?
とはいえ「苦しみ」を一切感じずに生きていくことを今すぐ始められるのであれば、誰も苦労はしませんよね?
否定してしまうのではなく、認識を改めて建設的な付き合い方を探っていく方が良さそうです。
苦しみを感じた時はむしろチャンスなのです。なぜなら「苦しみを感じる」ということは「問題を認識し、解決したい」という意思のあらわれだからです。本書では「あなたのニーズが満たされていない状態」と定義しています。
怒り、嫉妬、恐怖、不安、悲しみ、恥、虚しさ。
これらの感情は、社会生活に適応する中で長い年月をかけて獲得してきたいわば「集団適応のプログラム」なのです。
「ニーズの不足」は「集団生活から弾き出されることを防ぐ安全装置」として機能します。
その苦しみ、拗(こじ)らせるべからず
予期せぬ怪我や病気、大切な存在との突然の別れ、外敵との遭遇など「どうやっても避けられない苦しみ(一次の苦しみ)」は確かに存在します。
しかし、その苦しみから「更なる苦しみ(二次的な苦しみ)」を連想してしまうことが問題です。
例えば
①大怪我をしてしまったので ②退屈な入院生活を強いられてしまい ③高額な治療費も払わなくてはならない ④損失ばかりで最悪だ
と考えてしまうことで「苦しみ」は連鎖的に増大していきます。
しかし「一次の苦しみ」を認識するに留めおくことで、苦しみの増大は完全に防ぐことができるのです。
「今、ここに集中する」という生き方の方法としてマインドフルネスが有効であるとされる理由の一つがここにあります。
現在の出来事にのみ意識を向けることで、苦しみの増大から自由になることができるからです。
とはいえ、大怪我をすれば当然痛みを感じますし、別れの悲しみもすぐさま癒えるものでもありません。
あくまで、苦しみを拗(こじ)らせないという点において、マインドフルネスは有効なのです。
「自己」に降伏せよ
「ネガティブな感情はニーズが満たされないサイン」
「私たちは、苦しみを拗らせてしまいがちで、目の前の世界を生きることができない」
どちらも「自己」に関わることですね。これらのことを踏まえると、苦しみを生み出しているのは「自己」であるという結論になります。
では、苦しみの根源である「自己」をどう扱ったら良いのでしょうか?
ここで重要なことは「自己」がなくても問題ない場面は多いという事実です。極度の集中状態に入ったり、リラックス状態にある時、私たちはハッキリとした「自己」を認識していません。
また、すでに習慣化している行為においても「自己」を認識することはごく稀でしょう。「自己」が消えていても問題なく過ごせることが伝わったかと思います。
つまり、「自己」とは人間が獲得してきた「生存ツール」の一つなのです。
「自己」の働きには「抵抗せずに全面的に降伏する」ことが最適解です。
手放すことで自由になれる
最近の研究によって、人の脳は刺激に反応して、認識を作り出しているのではないことが明らかになってきました。我々の脳は、あらかじめ予測を立てて、外部からの刺激を受け取った上で、その誤差を修正しているとのこと。
もしもそうならば、私たちの認識している世界は、自身の作り出した認識の中にあるということになります。「見たいものを見て」「聞きたいことを聞いて」「感じたいことを感じている」という状態です。
このこと自体を事実として認識するかどうかも、既に認識したいことを選択しているという状況です。
(この考察については「受動意識仮説」も併せて読んでいただくと、より思考が深まるかと思います)
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ここで意識しておきたいのは「どんな選択も自分自信が選んで決めたと認識している」点ですね。選択した世界の方しか現実として認識できないので、あなたの見ている世界は「あなたが選んだ方」だけです。この選択が無意識的に何度も何度も繰り返されているのです。
意思の力は、私たちの選択にほとんど関与していないのです
都合良く現れた「自己」が偶々選んだことを人生の全てだと思わずに、無意識下で実行できることを積み上げていくことの方が、コストパフォーマンスが良いことが分かります。
「自己」は「幻想」であるということを改めて認識する必要があります。
「停止」と「観察」が「無我」を導く
認識が無意識に発生していて、しかもそれを知覚できないのならば、最早打つ手が無いのでは?
それを突破するヒントが「禅問答」です。
例えば「仏の正体と何か?」という問いに「乾いた糞の塊だ」と、どう考えても不可解な返答をするやりとりがあります。
このやりとり自体に明確な意味はないのにも関わらず、禅問答においては答えを要求されるのです。
しかし、このような出口のない問いについて考え続けると、解けない謎を考え続けたことによって脳の回路が停止し、結果として頭の中をめぐる思考から解き放たれる人が一定数いるのです。
これが思考が「停止」した状態です。意味をもたない文言を繰り返し詠唱したり、特定のパターンを繰り返す音楽を聴いたりすることでも同様の効果が有ります。
もう一つ、「自己」に対応する方法として「観察」があります。
これは、次々に浮かんでくる自分の感情や心の動きを落ち着いて見つめる、という作業です。日頃から「観察」のトレーニングを続けることで、妄想と現実をはっきりと区別できるようになるのです。
「停止」によって「自己」の働きを弱めて「観察」によって「自己」を正しく「認識」する。
この2段構えの流れは、私が普段から行っている瞑想から得られる効果に非常に近いものを感じました。
これからも、自己の鍛錬は欠かさず行っていきたいです。
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まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
本書には、精神修養に関する数多くの実践方法が掲載されています。
実践と理論が同時に丁寧に学べる稀有な一冊でした。自身の精神を鍛える類の本はそれなりに読んできたつもりですが、最新版で1冊選べと言われたらこの本は間違い無く選考候補に挙げるでしょう。
今回書かせていただいたのは、この本から学べることのほんの一部です。
精神修養を理論とともに学んですぐに実践したい!という方には是非とも手に取っていただきたい素晴らしい本です!
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